第4話 負けず嫌い


「勝負だよ!神谷君」


 とある日の昼休み…俺がスマホポチポチをしている最中、春川さんがお胸をポヨンとさせながらスマホを前にかざしてきた。


 なんというアングル。ローアングルで見る春川さんの持つ巨大メロンに俺はゲーム前だというのに、コールド負けしそうである。


「うむ、よかろう!その勝負…この神谷 渉が受けて立つ!」


 春川さんの宣戦布告に俺もおふざけまじりにスマホ片手に返した。


 少し前から話すようになってきた春川さん。俺の勝手なイメージ「愛嬌があって可愛い」という最近のイメージなのだが、本人曰く、奥手であまり人に声をかけられないらしい。


 自分でも言っていたが、自称『陰キャ』ということのようだ。


「さぁ、始めるよ〜!覚悟してよね…神谷君!これ負けたらジュース奢りだから!!」


 勝手にルールを作り出していく春川さん。スマホを両手で持ち、もう臨戦態勢に入っている。


 どれだけの自信があるのだろうか?今日はお小遣いをもらっていて財布には余裕がある。ジュースの一本、二本…これくらいは覚悟したほうがいいのかもしれない。


 そして始まったバトル…その行方は?


※ ※ ※


「あの〜?ジュース奢りは〜?」


「も〜一回!!まだまだこれからなんだから!!」


 かれこれ、20分ちょっとが経過した。たかだか昼休みの時間を潰すようなゲーム。そこまで本気でやるゲームではないのだが、結果は5戦5勝…俺の全勝だ。そもそも5戦というのも春川さんの「も〜一回」がずっと続いてるからこうなっているのだが…


 俺は察した。この子は生粋の…


『負けず嫌い』


 である。


「ダメだよ。春川さん…授業ももう始まるし、俺、トイレも行きたいから」


「む〜〜…じゃあ今日はこれくらいで許してあげる」


 なんでそんなに上から言えるのだろうか?頬を膨らませ次の授業の準備をする春川さん。だが、なんだか新たな一面を見られたようで俺も少し嬉しい気持ちになった。


※ ※ ※


 次の日の朝…


「神谷君…勝負だよ…」


 昨日とはうってかわり、静かなトーンな春川さん。なんだか目の下に黒いものがあるようなないような…そんな姿だ。


 そして…


「参りました…」


 俺は初めて春川さんに負けた。


「勝ったぁぁ……やったぁぁ………」


 一気に机にひれ伏した春川さん…嬉しいのか、疲れてるのかなんだかよくわからない状態だ。


 …炭酸…飲めるかな?…


 俺は自販機に売っているエナドリを一本、春川さんにプレゼントすることにした。


 


 


 

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