第34話 ジェラシー.2

 あまりにもくだらないことすぎて、私は呆れてしまった。ひょっとして鳴海君に対しても、似たようは感情を? さっぱりとした性格だと思っていたから、ちょっと以外だ。

 でも、そんなに嫌ではない。その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった気がした。誰かが自分のことをこんなにも気にかけてくれていることが、何だかとても嬉しくて、自然と心がほぐれていくような感じだ。


「ほんと、杏とは卒業以来でひさびさだったんだ。杏、中学の頃、副キャプテンやってたから」

「ジェラシ~……」


 再び、結衣の視線が刺さった。

 私の声は次第に小さくなり、すみません、と視線を下に落とした。

 結衣とは、先輩たちが引退後、キャプテンを選ぶ際に、結衣が第一候補に上がったときに、『桃が福キャプテンやるならやる』と、せっかく言ってくれたのに、私が断ってしまったいきさつがあった。

 あのときのことを、私はずっと申し訳ない気持ちを抱えていた。キャプテンの話が持ち上がったとき、結衣は本当に私のことを信じてくれていたのに、その期待に応えられなかった。

 私には自信がなかった。

 それは今も現在進行形なのだけれども。


「ごめん」


 と、私は小さな声で謝り、カフェのテーブルを見つめたまま続けた。昨日の打ち上げに行けなかった件もある。


「なんかいろいろと迷惑かけちゃって……」


 すると、結衣は、で——、と一呼吸置くように言ってから、今日の本題に入る。


「あのあと、鳴海君と何があったの?」


 ——きた。豪速球が。


 結衣は、昨日の練習試合、私が注意散漫で、プレーに集中できていなかった理由を見抜いていた。

 世界的に有名な選手でさえ、一試合に一本も入らないこともあるくらい、3ポイントシュートというのは、好不調の波が激しいものではあるのだけど、私の弱メンタルは考えものだった。

 何となくだけど、結衣がお祭りに四人で行くと言い出したときから、そんな私の弱メンタルを危惧して、結衣は、鳴海君との仲を取り持ってくれたような気がしていた。

 その気持ちに私は応えたい。

 そう思って、結衣には、鳴海君と私の関係のことを伝えられるだけ話をした。

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