第24話 戦隊ヒーロー.2

 ——え。

 居ない⁈

 何で?

 どうして私は、いつも空回ってしまうのだろう。

 私はただ、一生懸命やっているだけなのに。


 慌てて周囲を必死に探すけど、鳴海君の姿は見当たらない。

 今の状況が、全く理解できなかった。

 私の鈍臭さに痺れを切らして、帰ってしまったのだろうか。ふわふわ思い出に浸ってしまったせいだ、と後悔と不安ばかりが募った。

 それでも……、私に今できることは、とにかく探してみよう、それしかない、そう思って駆け出した。


 はあ、はあ、と、一つ一つの呼吸に、心臓をぎゅっと掴まれる。部活の練習で追い込んだあともあってか、そろそろ足の限界が近い。立っているのも辛かった。

 どうやら、ここにもいないみたいだ。

 ひとまず、脇にあった石垣に腰を下ろした。座るのにちょうど良い高さで、数少ない街灯がひっそりと照らす。

 神社の裏手の駐車場とあってか人通りもなく静かだった。車も数えるほど。近隣の道路は封鎖されているので、きっと関係者の人たちの車なのだと思う。祭囃子も少しばかり遠くに聞こえる。

 私はスマホを手に取りメールを送る。結衣と帰宅の約束をした時間まで、あとわずかだった。

 今日もミッションを果たせなかった。そう思うと何回もしょんぼりため息が出た。明日から頑張ろう、そう観念した。明後日も明明後日も全然自信ないけれど。でも、それしかない……。

 そのときだ。頭を悩ませている私の背後から声がした。背中と肩に何かが圧し掛かってきたような。経験はないけど、世間によく出てくるパワハラ上司みたいな。そんな圧力のせいで、咄嗟とっさに背筋がピンと伸びてしまう。


「おい、お姉ちゃん、ひょっとして迷子か?」


 私は恐る恐る立ち上がって振り返る。

 え。子供? 私が座っていたよりも何個か上の石垣に男の子が座っていた。そして、なぜだかとても偉そうで貫禄がある。


「安心しろ! おれも迷子だっ」


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