第18話 山田と鈴木.2

 足を止め、後ろを確認すると、同じクラスの女子がいた。二人とも、かき氷を手にしている。

 滝本も立ち止まった。


「お、山田と鈴木」


 皆とフレンドリーに接している山田に、鈴木は妹みたいに、いつもくっついている印象だ。


「滝本君、鳴海君と来てるとか、めっちゃ意外なんだけど」


 山田が笑って訊いてすぐに「おいおい、それはどういう意味だよ?」と、滝本との世間話が始まった。


「いやいや、てっきり女の子と一緒かと思ってたからさ~。てか、浴衣姿どう? 可愛いでしょ?」


 そのせいで俺は、鈴木と話さないといけないような雰囲気になる。お互い、どうも、とぎこちない挨拶を交わす。

 たしかに、祭りに浴衣姿は風情があるな、とは思った。あと、ぽたぽたと地面に汗をかいている、かき氷を目にして、ここで立ち話をするのも申し訳ない気もした。


「今日は二人で来てるの?」


 訊かれて少し返答に困った。説明するのが面倒だ。

 すると、鈴木は何かを察したのか、「そんな訳ないよね」と言い、照れ臭そうに微笑んだ。


「二人……モテるもんねっ」


 何だか妙なペースに呑み込まれた感じだった。わたあめみたいな独特な雰囲気と、あんず飴のような幼甘い香りを漂わせる。

 とりあえず、俺は簡単に経緯を説明した。

 だけど、鈴木は俺の領域に一歩踏み込んでくる。


「だったら……このあと一緒にどうですか?」


 ん? 何だ? 俺の話を聞いてなかったのか? しかも何故、敬語?

 そう言葉を口にする間もなく、鈴木はズケズケと入り込んでくる。


「二人より人数いた方が楽しいしさっ」


 どうして、そんなに頬を赤らめる。


「……それにずっと、鳴海君とゆっくり話してみたかったんだ」


 は? こいつは何を言ってる——?

 遠くの方で太鼓が鳴っている。

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