第14話 お祭り前夜.2

 部活が終わり、自転車通学の結衣と学校の正門で別れてから、最寄りの駅までの帰り道で、刻々とかわる夕焼けにひととき心奪われ、ふと日の早さを感じる。歩きながら、お祭りについて考える。


 明日は部活の後、自宅に戻ってから準備をした後に、結衣と再び合流する段取りとなっていた。


 天気予報は良好。ダッシュで家に帰って、シャワー浴びてから、服を着替える。髪をセットして、歯も磨いた方がいいだろうか? というか、何を着よう? 髪型は? 靴は何を履いていこう?

 そんなことよりも明日、私は変に取り乱すことなく接することができるだろうか。そこが一番の心配だ。学校では散々だったから。


 ……ああ、どうしよう。

 どきどきしてきた。


 結衣が、おかしなことを言うからだ。食堂で言われた言葉を思い出した。


『——朝帰りとかはやめてよね』


 何てハレンチ極まりないことを……

 ああ、想像しただけで顔から火が出そうだ。


 中目黒駅を下車し、駅を後にして、川沿いの道に出た。

 夜の帳が降りた川沿いの道は、静寂と薄明かりに包まれている。舗装された道はしっとりとした光沢を放ち、月光に照らされて銀色に輝いている。川のせせらぎが遠くから聞こえ、時折、風が木々の間をすり抜ける音が、葉っぱを揺らし、ささやきのように響いた。

 道の脇には、ぽつりぽつりと街灯が並び、穏やかなオレンジ色の光が地面を優しく照らし、その明かりの下に落ちた影は、まるで昔話の中に迷い込んだような錯覚を覚えさせ、彼と二人で歩いた記憶を呼び起こさせた。

 川面には、月光が淡く反射し、ゆらめく光の筋が幾重にも重なって、まるで夜の絵画のように幻想的な景色を作り出している。歩く足音は静かに響き、立ち止まって夜の静けさに耳を澄ませると、川の水面に浮かぶ月の影が、無言のまま心に残る。


 ただいま、と家に入るなり廊下で出くわしたお姉ちゃんに捕まる。

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