脚本②

N「森の中での生活にも慣れてきた女の子は、ある日、森の中に開けた平原のような場所を見つけました。何かいい考えを思いついた女の子は、アロマを引っ張って、その平原まで連れて行きます」


緞帳を上げる


S4 事件


下手から銀髪の女の子とアロマが小走りに出ていく。

銀髪の女の子がアロマの手を引く。少し乱暴に。

銀髪の女の子は楽しそうな笑顔で、アロマは困惑した表情で。


アロマ「どこへ連れていくつもり?」

白い女の子「とっても楽しい思いができる場所!」


ステージの真ん中あたりで立ち止まる。

木々のセットを下手側へと退場させる。


白い女の子「見て! この平原! すっごく気持ちが良いでしょ!」

アロマ「本当に……そうね、気持ち良い。こんな場所があったなんて、私、今まで知らなかったわ」


白い女の子がアロマに駆け寄る。アロマの手を握る。二、三度、はしゃいでジャンプする。


白い女の子「ねぇアロマ、驚いた? 驚いたよね?」

アロマ「う、うん。驚いたわ。こんなに綺麗な場所があったなんて」

白い女の子「じゃあ、今からもっともーっと気持ち良くて、アロマが驚くようなこと、してあげるね!」

アロマ「えっ?」


白い女の子がアロマを抱きかかえる。そのまま空中に飛び上がる(ワイヤーを使う?最悪飛んでるふりだけでもいい)。


アロマ「いやああああああああ!」

白い女の子「あっはは。アロマ、叫びすぎー」

アロマ「え、これ、なに。飛んでるの?」

白い女の子「そうだよ! 飛んでるんだよ!」

アロマ「そ、そんな……いったいどうやって……」

白い女の子「どうでもいいじゃん! 理屈なんかさぁ!」


もっと高度を上げる。(できたら天井くらいまで飛びたい)


アロマ「こんな高いところ、来たことない」

白い女の子「人間として普通に生きてたら、飛べるわけないもんねー!」

アロマ「ちょっと怖い……怖い、けど」

白い女の子「けど?」

アロマ「綺麗、ね。ここから見える景色」

白い女の子「綺麗でしょ! 空ってすごいんだよ!」

アロマ「うん。森の木が、緑色の絨毯みたいに見える。あ、私の家、あんな角砂糖みたいに小さかったんだ。ここから街も見える。建物も人もあんなに小さくて、両手で掬い取っちゃえそう」

白い女の子「空から見れば、森も街も、こんなに小さく見えるんだよ」

アロマ「本当ね。私たちが生きている世界って、こんなにちっぽけなものだったのね」

白い女の子「人間も、他の動物たちも、こんな小さな世界の小さな場所で生活を営んで、何も大きなものは残せないまま死んでいく。人間の人生なんて、その程度の価値しかないんだよ」

アロマ「……人の一生って、儚いものね」

白い女の子「もっと高いところから見たら、私たちは砂粒にも満たないような大きさしかない。そんなに小さかったら、一人でも二人でも三人でも、同じみたいなものでしょ?」

アロマ「うん、そうね。……優しいのね、あなた」

白い女の子「え? い、いや、別に。私はただ、ここからの景色をアロマに見せたかっただけだよ」

アロマ「ふふふ。でも、ありがとうね」


女の子が照れくさそうに顔を背ける。その視線の先に何かを発見して驚く。


白い女の子「あっ! やばい!」

アロマ「どうしたの?」


黒い鳥の大群が飛んでくる。白い女の子はバランスを崩してしまう。

白い女の子は抱きかかえていたアロマを落としてしまう。


白い女の子「アロマっ!」


アロマは地面に落下(マットか何かで受け止める)

アロマは目を閉じたまま動かなくなる。

白い女の子はアロマに駆け寄る。アロマの身体を起こす。


白い女の子「アロマ! アロマ!」(泣きそうな声で)


アロマの名前を連呼し続ける。


暗転

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