脚本①

ロンリーガールと純白の鳥

作:安達すみれ


N「むかしむかし、あるところに、アロマというひとりぼっちの女の子がいました。彼女

は早くに両親を亡くし、森の中にある大きな屋敷で、一人ぼっちで暮らしていました。」


緞帳を上げる。


S1 女の子と出会う


街の市場。

アロマが街の人々に挨拶して回る。


アロマ「ごきげんよう、おばさま。今日も良いお天気ね」(満面の笑み)

八百屋店主「こんにちは、アロマちゃん。今日はトマトが安いよ」

アロマ「あら、それじゃあお一ついただこうかしら~」

N「アロマは天涯孤独とは思えないほどとても元気な女の子。街の人々からはとても愛されていました。両親の残した遺産によって何不自由なく暮らしていたアロマは、森の大きなお屋敷の主ということで、街ではちょっとした有名人でした」


暗転。

場面切り替え。路地裏。

上手から柄の悪い男三人が気だるげ歩いてくる。

アロマは怯える。


暴漢1「よぉ~、アロマちゃん。本日はお日柄も良く~」

アロマ「ご、ごきげんよう~……」

暴漢2「俺たちさぁ、最近金に困ってんだよねぇ~」

暴漢3「優しいアロマちゃんならぁ~、俺たちの金、なんとかしてくれるかなぁ~って思って……」


男三人がアロマに詰め寄る。

アロマは怯えたような笑顔で、後ずさる。


アロマ「あの……お金が欲しいなら、真面目に働いたらいいんじゃないですか?」

暴漢1「なぁアロマちゃん、それはおかしいぜ。あんたは一度も働いたことねぇくせにそんだけの金持ちだ。なのになんで俺たちは汗水垂らして働かないと金が貰えねぇんだよ。これって不公平だよなぁ?」

暴漢2「そうだよ、不公平だよ」

暴漢3「不公平だってことは、何すればいいか、わかるよなぁ?」

アロマ「な、何ですか?」

暴漢1「金持ちの責任として、俺たち貧乏人に金を恵んでくれよ」

アロマ「……お、おいくらほど?」

暴漢1「あるだけ全部に決まってんだろ」

アロマ「そ、そんなの……払えないわ」

暴漢2「あぁ? 今持ってる金を全部出せって言ってるだけだろ。なんでそれが払えない?」

暴漢3「アロマちゃん、一回ジャンプしてみよっか」


アロマは震える。きつく目を閉じる。


アロマ「た、助けて……!」


暗転。

照明を下手に向ける。

下手から白いワンピースを着た銀髪の女の子が走ってくる。


白い女の子「やめろ悪者めー!」


白い女の子が男たちに向かってライダーキック。


暴漢たち「ぐ、ぐあー」


男たちは倒れて、地を這いながら上手から退場。

白い女の子はアロマに駆け寄る。アロマの手を握る。

アロマは惚けたような表情で女の子を見つめる。


白い女の子「ねぇ、大丈夫だった?」

アロマ「う、うん……ありがとう」

白い女の子「街にはああいう悪い人もたくさんいるから、女の子ひとりで出歩くときは気を付けてね」

アロマ「うん、わかった……」

白い女の子「じゃあ、私はもう行くから」

アロマ「ちょ、ちょっと待って!」


去っていこうとする白い女の子に向かって、アロマは手を伸ばす。

白い女の子は足を止めて、首だけで振り返る。


アロマ「あの……お礼をさせて、ほしくて」

白い女の子「お礼? そんなのいいのに」

アロマ「その、よかったら、今からうちに来ない? ご馳走、するから」


アロマは照れくさそうに俯く。

白い女の子は笑顔になって、アロマの手を掴む。


白い女の子「うん! ぜひご馳走になりたいわ、アロマちゃんのお料理!」

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