10話 天使も大変


  「あーだめだわニナエル」

 「これだめだわニナエル」

 

 俺達はホテルについた。

 カウンターに人はおらず、電子パッドで部屋を選び、金を払うと中に入れる仕組みになっていた。


 「異世界も人件費削減なんですかね」


 「そうだなぁ」

 「カウンターで見られたくない人もいるだろうしなぁ」

 「というか、そういう人が多いんだろうなぁ」


 「あ、あれですね」

 「天使が何休んでるんだとか」

 「私達が収めた血税で」

 「こんな所でサボってんのか」

 「この税金泥棒とか言われるから」

 「そういう対策ですね」

 「分かります、そういうの」


 「ん、ああ」

 「天使も大変らしいな」

 「なんか、そんな話聞いた記憶あるわ」

 「前世の記憶がなくても」


 「そうですよ」

 「天使って大変なんです」


 「コンビニでアイス食べてたら」

 「それだけで報告されたりするんですよ」

 「怒られたりもするんですよ」

 「飲み物は許されても」

 「勤務時間中にコンビニでアイスはだめなんだって」

 「理不尽ですよね」

 「私だって、周辺住民の小さな声を聞き入れようとか」

 「そんな言い訳をアイス食べながら考えたりしてるんですよ」


 「あー、ニナエルは人間だけど」

 「天使も大変そうだな」

 

 「その記憶、誰の記憶?」

 「異世界転生してきた混乱で、誰かの記憶が混じってきたんじゃね」

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