3話 「俺の前世は最高だったぜー!」「ありがとう皆!」


  「お前、名前は」

 

 一緒に異世界転生するんだから、名前ぐらい知っておかないとな。


 「ニナエルよ」


 「良い名前だ」


 嘘偽りなく、そんな言葉が出た。


 「そりゃどうも」


 「ほら、いくぞ」

 「ニナエル」


 俺はニナエルの手を握り、扉に向かって走りだした。


 「ありがとう、前世」

 「ありがとうチートスキル」

 「俺は異世界転生してもチートスキルモンスターテイムAランクのおかげでなんとかやっていけそうです」

 「仲間のニナエルもいるしな」


 「はぁ」

 「まぁよろしくお願いしますね」


 扉を開き、扉の向こう側にいくと、前世の記憶が蘇ってくる。

 そして、蘇っては消えていっている。


 ははは、ははは。


 「ははははは」


 「どうしたんですか」

 「前世の記憶を思い出して、懺悔とかしないんですか」

 「懺悔なら受け付けますよ」


 「いやいや、もう笑うしかないでしょ」


 「笑ってるより、懺悔や告白の方をおすすめしますよ」

 「異世界転生したらこの記憶もほとんど消えてしまいますから」

 「その前に、少しでも罪への後悔とかをですね」


 「そういうの、間に合ってるんで」


 「間に合ってないでしょうに」

 「今ならまだ間に合いますよ」

 「さぁほらほら、早く」

 「私、そういうの得意なんですよ」

 「そういう仕事してますからね」

 「私、天使っぽいでしょう」


 ニナエルは得意げだ。


 懺悔だの告白だなんてのも今更だが、しておくか。


 「すまない」


 「すまないって」


 他に、どんな言葉を使えばよかったのだろうか。


 「ニナエル、お前を愛していた」

 「それが、この結果だ」


 「異世界転生しても、お前を愛したい」

 「お前が奨めてくれたように、告白ってやつだ」


 「はぁぁぁ」

 「そんな告白されても困るんですよ」


 「異世界転生して記憶が消えるまえに言っておきますね」


 「死ね」

 「貴方の事は嫌いです」

 「憎んでいます」

 「とっと魂から消滅しちまえ蛆虫が」

 「貴方が異世界転生しても何も変わらないわ」

 「せいぜい、また死ねばいいのよ」


 ニナエルは、蛆虫を見るかのような目で俺を見て、中指を立ててくる。


 ははは、当然か。

 これは報いってやつか。

 報いは受けなきゃいけないんだものな。

 

 意識が消えていく。

 俺は、まもなく異世界転生するんだろうな。


 「俺の前世は最高だったぜー!」

 「ありがとう皆!」

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