偶然助けた女の子がヤンデレで付きまとわれる事になったけど、ふわふわ天然の先輩にヨシヨシされながらも、引きこもりの妹を人気Vtuberに押し上げるハーレムラブコメ。
第18話 妹、人気Vtuberへの道のりを歩む。そう、着実に。確実に。それはまるで白鳥が羽ばたく瞬間のように、美しく、しなやかに飛ぶ……いや飛んでる!! 妹なのに!!
第18話 妹、人気Vtuberへの道のりを歩む。そう、着実に。確実に。それはまるで白鳥が羽ばたく瞬間のように、美しく、しなやかに飛ぶ……いや飛んでる!! 妹なのに!!
「それで、事情を聞かせてもらえる?」
白百合さんの家から生還して自宅の扉を開けたその瞬間、結衣に泣き疲れた俺は、とりあえず彼女をなだめてリビングへと向かった。
そして、机を境にして対面にある椅子に座って結衣と向かい合った後、俺は彼女に詳しい話を聞く。
「えっと、結論から言うと、知らないVtuberの人からコラボに誘われて困ってる……」
「なるほど、どんな人に誘われたの?」
「この人なんだけど……」
そう言って結衣がこちらに向かってスマホを差し出してきたので、俺はその画面に目を移す。
するとそこには、一人の女性Vtuberのホーム画面が映し出されていた。
「えっと、南見波……? ああ『ミナミ・ナミ』さんか。てか、登録者五万人いるじゃん……なんで結衣に声かけたんだろうな?」
「なんか、私が雑談とかで話してる内容がミナミさんの趣味と会うんだって」
「なるほどなぁ。で、一応確認なんだけど、結衣……というか『柚木ユイナ』の登録者数は?」
「……この前、やっと六百人になったよ」
「……まぁ、結衣は可愛いからね。コラボ相手としてはギリ釣り合ってるよ」
「そんな無理にフォローしなくていいよ! 格差が凄すぎることなんて、私が一番よくわかってるしっ!」
そんなやりとりの後で、俺は本題に入る。
「ようするに、なんでこんなに格差があるのにコラボを提案されたのかが分からなくて、受け入れるべきなのかを悩んでるって事でいいの?」
「あ、いやぁ、そのですね……実はそうじゃなくてですねぇ……」
「そうじゃないのかぁ……じゃあ何を悩んでるの?」
「あのぉ……実はもう、ミナミさんにコラボしましょうって言っちゃったんだよねぇ……」
「ありゃぁ……俺とルリ姉以外とは、ろくに会話もできないのにねぇ……」
「いやはや、その時はチャットで会話してたんだけどさ、あまりに話が合うもんで舞い上がっちゃって……つい」
そう言った後に結衣は、言葉を続ける。
「それでね、予定聞いたら明日は日曜日で学校休みだから配信できるって言われたから、じゃあ明日の午後からコラボ配信しようよって言っちゃったんだよね……」
「ありゃりゃ……」
「あとあと、話の中で住んでる家が近いって分かって、もういっそ実際に会ってコラボしちゃおっかー、みたいな事になっちゃって……えへへ」
「そんなに自分の首絞めるの好きなの? もうお手上げだよ」
「やだー! 見捨てないでぇ!」
そうして、再度結衣に泣きつかれた俺は、改めて思考する。
「うーん、でも、そんなに決まっちゃってたら俺が手伝える事なんてそんなにないような気がするけど。動画なら編集とか手伝えるけど、生配信だから俺は喋れないし」
「それなんだけどさ、明日の配信はミナミさんの家でする事になったから、私と一緒に来て! それで、ずっと私の隣にいて!」
「俺はそれでも構わないけど、相手もVtuberなんだから直接顔を合わせる仕事はリスクだと捉えるだろうし、受け入れてもらえるかね?」
「当日はスタッフを連れて行くって伝えてあるから、それは大丈夫」
「……登録者三百人のチャンネルにスタッフがついてるのも違和感ある気がするけど、まぁ、首の皮はギリ繋がってるって感じか……ってか、俺がついて行く事を前提で話進めてるじゃんか」
「まあ正直、お兄がいればなんとかなるかなって思って……えへ」
……そんな調子だと、一人立ちは難しいのではないだろうか。
まぁ『なら手伝わないんですか?』と問われたら、もちろん手伝うに決まってるんだけどさ。
なんて俺が考えていると、結衣は機嫌良さそうに言葉を発する。
「よーし、これで解決だぁ! アイスたーべよ!」
そんな呑気な事を言う結衣に、俺はふと浮かんだ疑問を投げかける。
「……でも結衣、普段外出ないし、明日着ていく服持ってないよな?」
「はっ、そうだった……! 外出る為には服が必要なんだった……外出てなさすぎで忘れてた」
「じゃあ、明日の午前中に服買いに行くか。デパートが近くにあるのは幸運だったな」
「……お兄、ここで悲しいお知らせがあります」
「なんでしょう?」
「私、服を買いに行くための服をもっていません」
「あしゃしゃしゃ……」
そりゃそうだ、外着全般持ってないんだから……しかし、どうするかな……
「オンラインで買おうにも今はもう夜だし、買ったとしても明日の午前中には届かないだろうしなぁ……」
「お、お兄ぃ……なんとかならないかなぁ……?」
そう言いながらこちらを見つめてくる結衣を救うべく俺は、頭を捻る。
その結果、一つだけ思い当たる節があったので、それを提案する事にした。
「……そうだ、結衣が一年前まで着てた中学の制服がある。結衣ならまだ着れるんじゃないか?」
「まぁ確かに、あるにはあるけど……とりあえず、部屋で着替えてくるね」
そう言って彼女は、二階へと上がっていった。
(結衣は中学生時代と比べても背丈ほとんど変わってないから、多分問題ないだろう)
そんな事を思いながら、結衣の帰りを待っていると、制服姿になった彼女はすぐに一階に戻ってきた。
しかし、何故か彼女はソワソワしながらこちらに近づいてきて、俺に問いを投げかけてくる。
「本当にこれで外出るの……? 十六歳無職のコスプレだよ……?」
「いや、めちゃくちゃ似合ってるし可愛いよ。見てる感じは全然違和感ないし、完全に中学生に見える」
「それはそれで嬉しくないかも……なんか、他に服ないかなぁ?」
「そうは言っても無いものは無いしなぁ、他の選択肢だとパジャマと全裸くらいしか思いつかないけど、どっちで服買いに行きたい?」
「うぅ……その二択なら、おとなしく制服着ます」
そうして俺は、改めて結衣の全身を見る。
その制服姿は現役の中学生だった時代と変わらず、とても似合っていた。
「しかし、ちょっとだけ不安だったけど……卒業してから一年以上経った今でも見事にサイズぴったりだな。よかったよかった」
「……まだ成長期じゃないだけだから、来年にはルリねぇみたいになるから」
「……まあ、可能性を信じる事は大切だよな」
「私全肯定botのお兄ですら諦めた目をしている……!」
そんな会話をした後で俺たち二人は明日に備えて、早めに寝る事にした。
〜次の日〜
翌日になって朝一番『なんとなく鞄を持っている方が社会適合者っぽく見えそう』という理由で、何も入っていないであろう鞄を手に持った制服姿の結衣と共にデパートへと向かい、真っ先に服売り場へと向かった。
そこで二人で服を見繕って、これから夏が近いと言うこともあり、なんだか麦わら帽子が合いそうな比較的薄手の白いワンピースを選択し購入した。
試着した際に結衣は『私には可愛すぎる』と言っていたが『服より結衣のほうが可愛いから何も問題はない』と言い聞かせて買わせた。実際、とても可愛かった。
(そうだ、せっかく外に出たし、あの話もしといたほうがいいよな……)
そうして俺は、結衣の耳元に顔を近づけて、小さな声で話かける。
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