第10話 1日2パンツ、3日で逮捕

 ルリ姉のスカートの中から覗くタイツの生地と、その奥から透けて見える白い下着を前にして俺の体が固まっていると、そんな俺の視線に気がついたのか彼女はしゃがみ込んだ態勢のままで自らの下半身に視線を向けた。


 そして、スカートの中が見えてしまっているという事に気がついたらしいルリ姉は、驚いたような表情で咄嗟にスカートを抑えながらすばやく立ち上がると、赤くなった顔を俺に向けて問いかけてくる。



「は、晴くん……えっと、見えちゃった……よね?」


「あ、いや、猫を見てたよ、猫……ほら、にゃーん。あ、待って、このタイミングで行かないでよ」



 そうして、俺が猫に話を逸らそうとした時、当の本猫はルリ姉が撫でるのをやめて立ち上がったせいか、何食わぬ顔でどこかへと行ってしまわれた。


 これだから野生動物は……で、結局どうするのこの空気。


 なんて俺が思っていると、ルリ姉は真っ赤になった顔を手でパタパタと仰ぎながら、こちらに語りかけてくる。



「ご、ごめんね。そんなこと聞かれても困っちゃうよね、わたしが気をつけなきゃいけなかったのにね。ハルくんと一緒にいるのが楽しくて、つい気が抜けちゃって……」


「あー、えっと。俺もつい体が固まっちゃったというか。すぐに目を逸さなかった俺も悪かったし……ルリ姉は悪くないというか」



 と、俺がなんとか空気を立て直せないかと思い喋る言葉を考えていると、ルリ姉に顔を逸らされてしまった。



「……ルリ姉? もしかして怒ってる?」


「ち、違うの、ハルくんの顔を見ると、なんだか恥ずかしくなっちゃって……」



 そして、ルリ姉はそう言った後で一度大きく深呼吸をして、再度こちらに向き直った。



「ごめんね、男の子に見られちゃったの初めてだからびっくりしちゃって……どうすればいいのか分からなくなっちゃった」


「あー……えっと、一人になりたかったりする? 俺だけ先に帰ろうか?」


「ううん、もう大丈夫……これから気をつけるね」



 そんな事を言いながら笑顔を見せるルリ姉は、こちらに顔を向けながら両手でスカートを軽く整えているものの、その顔はいまだ赤みをおびていて、どう考えても先ほどの事を意識しているのは一目瞭然だった。


 しかし、こちらからそれに触れるわけにもいかず、何もする事はできないので、そのまま不思議な空気感に包まれながらも終始無言で帰路についた。



 〜帰宅後〜



「ただいまー」



 そうして、ルリ姉と共に我が家へと帰宅し、帰宅時の儀式であるただいま宣言を二人ですると、珍しく我が妹である結衣からの返事がなかった。



(返事がないとは珍しい……この時間は配信するって言ってなかったけど、部屋にこもって作業でもしてるのか?)



 結衣が配信を始める際には、俺が外にいる場合でも必ず連絡をもらうようにしている。


 理由はもちろん、もし男である俺の声が配信に乗ってしまったら彼氏バレだと騒がれて、結衣が売れるための障害になる可能性があるからだ。



(一応、静かにしておくか。お腹が空いたらリビングにくるだろ)



 そう考えて俺は、ルリ姉と共に手洗いうがいを済ませたあとで、リビングへと向かうルリ姉と別れて鞄を置くために一度、自分の部屋へと戻る事にした。


 そして、自分の部屋がある二階への階段を念の為に音を立てないように慎重に登り、ゆっくりと部屋の扉を開ける。


 すると部屋の中には、何故か俺のベッドにくるまっている結衣がいた。



「……結衣? 俺のベットでなにしてんの?」


「……!? お兄帰ってたの!?」


「一応、ルリ姉と一緒に『ただいま』って言ったんだけど……」


「私には聞こえてなかった! やり直してきてください!」


「それは別にいいけど……」



 そうして俺は、その行為になんの意味があるのかと疑問を抱きながらも彼女が喜ぶのならと思い、とりあえず一度部屋から出て玄関まで戻り、今度は一人で帰宅時の儀式を行う。



「ただいまー」



 そして、俺の言葉を聞いた後で結衣は二階から降りてきて、返答を返してくれる。



「お兄、おかえりなさい! ご飯にする? お風呂にする? それとも……ゆい?」


「……これ、何の意味があるの?」


「お兄が私と話したがってるかなって思って、かまってあげた」


「そうかい、結衣はいい子だね……ところで、なんで俺のベッドに入ってたの?」


「……別に、理由なんかないよ、お兄のベッドを温めてあげてただけ」


「そんな卵産んだ親鳥みたいな事してたんだ……結衣は母鳥の才能があるな」


「とにかく、そのことはいいから、お兄は気にしなくていいの!」



 そうして、なんて事ない日常会話をしながらも、俺が帰ってきてからの結衣の態度はだいぶおかしく、会話をしてきる彼女の表情からも、なんだか無理して無理に元気を絞り出しているような気配を俺は感じ取った。


 そして俺は、結衣に問う。



「もしかして、なんか嫌なことでもあった? どしたん、話聞こか?」


「その聞き方はヤダ……でも話は聞いて」


「じゃあ、また俺の部屋戻るか」



 そうして、二人で部屋に戻った後で、俺はベットに座った結衣に向かって再度問いかける。



「それで、何があった?」

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