①に戻る

①花見に誘う方は、まずどういって誘うのか?がある。妹と友達とその家族らが、花見をするから一緒に行きませんか?だろうよ。


けどそれ、言える?


結局言えずに今日一日が過ぎてしまった。言えるならさっさと言うってば。なかなか言えないから困っているんじゃないか。



②仮に声かけができたとしても、江崎君の「YES」「NO」がある。これが恐怖ものだ。

拒否されたらどうしよう‥‥


角谷さんとは学校帰りなら良いけど、週末までは逢いたくないんだよなあ。。。

そう思われている節は無いけれど、実はそうだったら、その事実は知りたくない。


自分がかつて色んな男たちと色んな付き合い方をしてきたことが首を締める。

学校で会って、話しているのはそこそこ楽しいんだけど、男女としての付き合いは「NO」の判定。なのでプライベートまであんまり会いたくない、とした男子たちが居た。そういう男子たちは今から思えば、性格も条件も悪い男子たちじゃなかった。多分後々考えたらとてもくだらない理由で「NO」のジャッジをしたんだ。


前に阿須那と話した時に登場した『あんなの『男』じゃないわ』って言った当時の私が、今の私を見て片頬だけに笑みを浮かべる。

私は自室の勉強机から顔をあげて、大きな溜息をつく。

だからといって誰とでもOKするわけにはいかないじゃない‥‥

言い訳をする‥‥‥判定を下した言い訳を。しかし、


――――今度は私が判定を受ける番?


そう考えたら怖いのである。

自分と男たちを、上空から見たように客観視してみよう。



こんなことを何とも思わない男たちから先にまず、私に言い寄る。理由は何とも思わないから。慣れているから、だ。そんな男たちほど「口説く」作業がうまくなるのは当然だ。

けどそれは「作業」であって心が通っているかといえばどれほどのものだろう?


ダメなら次の人、またダメなら次の人というだけの、まるで流れ作業じゃないだろうか。そんな男たちのただの作業工程を「うまい」「楽しい」「素敵」と思って付いて行ってたとしたら、今のこのザマは納得できる。



それに比べて散々葛藤し、思いを伝えることができずに悩み、苦しみ、勇気をふり絞って突撃してきた男子の告白や、アプローチは実に下手なもので、取るに足らないもの、重くて面倒なもの、おもしろくない、としてジャッジしてきたとしたら‥‥今の私は後者である。



――――あなたをイージーに誘ってくる連中らの思いと一緒にしないで!そんなふうに切り捨てられたくない!

自分のしてきたことが、自分に襲い掛かってくる。



何の気なしにしてきたこと、それもその当時には当時なりの主張があったはずなのに、そこが抜け落ちてしまって、ただ罪に思えるところだけが残骸のように残っている。そして何かしら別の事象が発生して、それが津波のように私に襲い掛かってきたときに、海底からそれらが掘り起こされてきて、私を襲ってくるようだ。

――――竹村たちのところにいたあいつらのように、自分はするけど人からされたくはないし、やったことはやりかえされるという『因果応報』を全く理解しない頭脳になれたらなあ。。。まあ、そんな奴らだから、どこに消えたか分からないようになったけど。



③後は誘えたとしても、阿須那にカミングアウトがある。阿須那はその辺りは信じて守ってくれそうだけど親バレリスクが発生する。信用のない私だ。親バレしたときはなんて言い訳する?



④もう花見に誘うことになんのメリットも無さそうに見える。だからもう諦めてやめておこう。そうしたら何も起こらない。気負わなくて済むし、ジャッジされなくても済むから、私はクールなままでいられる。澄まして賢そうにしていればいいんだ。実は男だなんてこともバレないし、身内に心配もかけない。いいよいいよ、それでいい。それがいい‥‥



⑤――――それが本当に、いい?

ずっとずっと判定されない自分なんて、未来に存在するのかと言えばそんなことはなく、何時か誰かに判定される。そしてできれば次回判定されるのは、自分の警告灯が出ない相手が良いと思っている。判定されない人生なんて存在しない。判定から逃げ続けることは可能だが、逃げ続けた顛末が判定結果となるだろう、そんな人生嫌だ。どうせ判定されるなら迎え撃ちたい。



⑥お弁当箱を買って「お返しに」と渡して、そこには私が作ったお弁当が入っていて、その日はそれと他にも作って持ってきたおかずを一緒に茣蓙敷いて食べる。桜を見ながら。

周りはいるけど、ほぼ二人きりな時間。しかも学校の帰りじゃなく、プライベートな時間を共有する。


素敵すぎるじゃないか!!


これからの私には合っているんじゃないかなあ。そういうゆっくりとした手堅いお付き合いの仕方。


お弁当を出してあげた時に彼がどういう反応をするかは未知数。未知に挑む!か。さっき言った『迎え撃つ』に値するじゃないか。

澄まして賢そうなんて、もう私はそんなキャラじゃない。ノッケからアホキャラ満開。きっと彼も、もう知っている。



⑦あと、とっさに嘘をついたけど、阿須那には本当のことを分かっておいてもらえるチャンスになる。江崎君は今まで私が付き合ってきた、つるんできた男たちと全く違う存在。これは実物を見てもらうことが最大の信用になると思う。いくら私が口で言ったところで今までのことがあるからダメ。だいたいまだまだ全然彼氏彼女じゃないし、友達としても歴浅いし。そこまでじゃない。それに本当に良い人、親切な人、頼りになる人、私が限りなく今お世話になっている人、というのを分かっておいてもらいたい。その上で今後どうするかを、いざというときに相談できるようにしておける良いチャンスかも。



⑧これはやはり、花見に誘うという、「仕入」を上回る「売上」を上げて、預った消費税を「未払消費税」とし、しかるべきタイミングで預かった消費税を支払う‥‥その時にお金があるかどうかの恐怖と戦いながらでも、払えるように頑張る、ちゃんと払える自分(会社)になる、が良い。



――――でもどう言って誘うのよ?

また①に戻るのだった。

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