留守番電話

口羽龍

留守番電話

 山江健一(やまえけんいち)は東京に住む大学生。実家は島根にあるが、高校卒業を機に上京して、東京の大学に通っている。東京でもっと成長して、島根でまた頑張るんだと思っている。まだ来たばかりの頃は、少し慣れない所があったが、徐々に新しい生活に慣れてきて、普通に生活できるようになった。


「さて、晴斗元気かな?」


 健一は晴斗(はると)の事が気になった。晴斗は健一の幼馴染だ。最近、全く電話をしていない。健一は晴斗に電話をかける事にした。


 健一は受話器を取り、晴斗に電話をかけた。


「ただいま、電話に出る事ができません。ピーという発信音の後に、お名前とご用件をお話しください」


 だが、留守番電話だ。こんな事は全くなかった。どうしたんだろう。健一は首をかしげた。


「山江健一です。明日、電話で話をしませんか?」


 健一は伝言を入れた。これで明日になったら、返事が来るだろう。


「うーん・・・。こんな事あったかな?」


 だが、健一は信じられなかった。今まで、留守番電話なんてなかった。おかしいな。


「まぁいいか・・・。もう寝よう」


 そろそろ寝る時間だ。明日は講義がある。しっかりと寝ないと。健一は電気を消し、ベッドに横になった。




 次の朝、健一は目を覚ました。いつもはスマホの目覚ましで起きるのに、普通に起きた。設定し忘れたかな?


 健一は時計を見た。あと20分ぐらいで講義だ。朝食を食べていないけど、講義に遅れてはならない。


「いっけね! 講義だ講義だ」


 健一は走って大学に向かった。大学へは歩いて行ける距離だ。早く行かないと。


 健一はアパートを出て、大学に向かった。大学の周りには、多くの生徒がいる。彼らはこれからそれぞれの講義の場に向かうのだろう。彼らは楽しそうだ。自分はまだまだ友達があまりできていないけど、これからどんどん作らないと。


 健一は講義のある教室にやってきた。すでに人が集まっている。


「間に合った・・・」


 健一は深呼吸をした。まだ教授は来ていない。何とか間に合ったようだ。


 だが、健一は気になっていた。昨日の夜、晴斗が留守番電話になっている事だ。いつもはそうじゃないのに、明らかにおかしいな。


「どうしたんだい?」


 健一は横を向いた。隣には友人の永井がいる。永井は何かを考えている健一の表情が気になった。


「友人に電話をしたんだが、留守番電話だったんだ」

「ふーん。まぁ、そんな日もあるさ」


 永井は思った。留守番電話になるときもあるさ。きっと、どこかに出かけているんだろう。また電話すれば、きっと大丈夫だろう。


「そう、だよね!」

「うん」


 健一は少し下を出した。昨夜はたまたまいなかっただけなんだ。大丈夫だろう。




 夜、健一は今日受ける講義を全部終えて、自宅に戻ってきた。今日は夜まで講義があった。健一はとても疲れていた。肩を落としている。だけど、また明日も頑張らないと。


「ただいまー」


 健一は自宅に入った。だが、電気がつかない。いったいどういう事だろう。電球が切れたんだろうか?


 突然、あたりが明るくなった。そこは、いつも見る自分の部屋じゃない。晴斗の部屋だ。どうしてこんな室内になったんだろう。健一は首をかしげた。


「あれ、ここは?」


 と、健一は後ろから誰かがやってくるのに気が付いた。その男は血みどろで、包丁を持っている。


「キャー!」


 健一は包丁でめった刺しにされた。健一は出血多量で死んだ。だが、遺体は発見されなかったという。




 翌日、瀬川(せがわ)教授は騒然となっていた。いつも自分の講義に来ている山江健一が来ない。先週の講義には来ていたのに。どうしたんだろう。全くわからない。


「どうした?」


 瀬川は横を向いた。そこには同じく教授の小西(こにし)がいる。小西は瀬川の表情が気になった。何か気になる事があるんだろうかと思った。


「山江くん、来ないなと思って」

「そうですね、電話かけてみます?」


 健一が来ないのを、小西も気にしていた。何かに巻き込まれたんだろうか? いや、そんなことはない。ここはそんなに犯罪が起きない。


「はい」


 瀬川は健一に電話をかける事にした。瀬川は手持ちのスマホで、健一に電話をかけた。


「ただいま、電話に出る事ができません。ピーという発信音の後に、お名前とご用件をお話しください」


 だが、留守番電話だ。何か重要な事があって、出かけているのかな?


「山江くん、今日は講義です。どうして来ないんですか? 来てください」


 そして、電話が切れた。瀬川は首をかしげた。こんな事あったかな? 留守番電話なんて、今までなかった。おかしいな。


「うーん・・・」

「どうしたんですか?」


 小西は瀬川の表情が気になった。どうやら留守番電話だったようだ。それだけでとても気になるんだろうか?


「こんな事、あったかなと思って」

「そうですね。おかしいですね」


 小西もおかしいと思っていた。健一が講義を休んだ事はない。いったい何だろう。小西も首をかしげた。


「うん」

「まぁ、また戻ってくるでしょ?」

「うん。そうだね」


 瀬川は時計を見た。また講義に向かわないと。


「じゃあ、行ってくるね」


 そして、瀬川は講義に向かった。小西はそんな瀬川の後ろ姿を見ている。




 その夜、今日の全ての講義を終えた瀬川は、研究室に向かっていた。瀬川は気になっていた。どうして健一が来なかったのか? どうして留守番電話になっていたのか?


「今日も疲れたな」


 瀬川は研究室に入った。それ以後、瀬川の姿を見た者はいないという。

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