ガレットなんだよ

あの後、クエストを餌にそれはもうアンバーにいじられた。そんで最後に「お前には期待してるぞ(意訳:また依頼を受けるよな?)」である。いやすごく助かるんだけど、これ結構でかい借りを作った気がする…


(それでアルは今どこに向かってるの?)


いや、せっかくなら魔獣の専門家にお話を聞きに行こうかなって。


そうして俺たちは帰路から外れ、目的地へ向かった。



「ということがあって、改めて魔獣についてガッツさんに確認をしたく伺ったのですが。」


「なるほどね。でも、今父さんは魔獣の世話に行ってるからいないんだ。」


そういってマグカップを差し出したこの少年は、ガッツさんの息子さんにあたるガレット君。筋肉質なガッツさんとは異なり体は細く、眼鏡に隠された瞳には高い知性を感じさせる。


「ねえ、もしよかったら僕にその魔獣を見せてくれないかな?」


ただ、今は知性の光は身を潜め、代わりに好奇心の炎が燈っている。いいねー。元理系の人間としてその気持ちは良くわかる。


「アイリスいいか?」


「シュルー♪」


「うわーリトルスネークの色付きだね。名前はなんていうの?」


「アイリスっていうんだ。」


「良い名前だね。それにすごくかわいいよ。」


「シュルルー♪」


撫でられて嬉しそうにするアイリス。その反応にガレット君の表情が緩んでいる。ただ、さすが緩めすぎだな。イケメンフェイスが残念なことになってる。


「えっと、まずアルクトスさんは魔獣と魔物の違いは知っている?」


あ、顔が戻った。切り替え早いなー


「いや知らないからそこからお願い。後、俺のことはアルでいいよ。俺もガレットって呼ぶから」


「了解だよアル。それでまずは魔獣と魔物の一番の違いは、復活する場所が決まっているかどうかなんだ。魔物の場合は、その辺は決まってないから、一度霧散すると復活場所はランダムになる。対して魔獣は自身が気に入った魔力の周りをリスポーン地点設定しどこで霧散してもその場所で復活するんだ。まあ、その時に魔力が不足していると退化してしまうから魔獣は少なんだけどね。」


「えっと…要は強さを求めて徘徊するのが魔物で、縄張りを作るのが魔獣ってことであってる?」


「そんな感じだね。だから、襲ってくるのは大体魔物なんだ。だって場所にこだわらずに戦い続けることで強くなるのが魔物だからね。対して魔獣は気に入った魔力のみを吸収することで、継続的に成長していく。だから戦闘が無くても継続的に成長することができるわけなんだ。」


「なるほどね。ならテイムした魔物はどうなるの?」


「テイムをした段階で魔獣になるね。だからテイムした魔獣がやられても、テイマーの元に卵になって戻ってくるんだよ。あ、テイマーってのは魔獣を従えた人の総称ね。」


あ、やっぱりそう呼ばれているのね。…うん?卵?


「卵で思い出したんだけど、エペバードを倒したときにこれを拾ったんだけど。ガレットなんだかわかる?」


そういって俺はなんとなしで卵を取り出した。それが起爆剤になるなんて考えずに…


(いや、思考してるじゃん!)


「それは!鳥の魔獣の卵だね!魔物が倒された相手の魔力を気に入った時に、その場で即座復活を選択することで発生する現象なんだ。これって…」


着火!好奇心が爆発!結果トーク速度が1.5倍へ


(楽しそうだねアル)


楽しいぜ!


それはそうと、この卵はレアドロってことなんだね理解した。しかし、魔力は霧散してしまうのに何でドロップ品は残るんだ?


(勇気と試練の神、アベントラ様が設定してるからなんだよ。ついでに生ものは封を切るまで時間が経過しないんだよ。)


ありがとうガイア。おかげで疑問が高速解決することにも大分慣れてきた。あと神とは言え、当たり前のように時間干渉しないで?俺の常識が壊れる。


(でも、この世界では当たり前の常識なんだよ?それに、肉は熟成させる方がおいしいこともあるから一概にいいとは言えないんだよ。)


そんなピンポイントなデメリット上げられましても…あと、少し前から思ってたけどこの世界の食事事情は結構進んでますね。助かります。


(自慢の世界なんだよ!)


「それで、卵に魔力を流し込むことで羽化するんだよ。すごいよね。」



あ、ガイアと会話しているうちに、ガレットの説明が卵の羽化方法に移行している。そろそろ、閑話休題しておきますか。


(はーい)


「なるほど、要は自身を構成する魔力が満たされれば生まれるってことか。」


「そういうことだね。それにしても、アルって頭の回転早いね。もしかして、研究者こっち側?」


「知識を求めるのは好きだよ。そうだ、せっかくなら魔獣について知っていること、もっと教えてくれないか?」


「任せて!よーし思い存分語るぞ!」


あ、早またかもしれん。


それから俺はガレットに魔獣について説明を受けた。そしてそれはだんだん、議論に代わっていき…


「だから、魔獣は魔物に比べて特殊な進化をしやすくなるんだ。」


「なるほど、でもそうすると同じ人物が同じ魔獣を育てた場合に全く同じ進化をしないとおかしくないか?」


「そうなんだよ!だから僕はあくまでテイマーからの魔力の他に生活する環境と、魔獣自身の指向が重要なんだと思うんだ!」


(アル?よくついていけるね…私は眠くなってきたよ…)


いや、俺も辞め時がわからなくなってきてる。ガイアヘルプ…


(いや、アルがしゃべるのやめればいいんじゃない?)


なんかそれは負けた気がするから…


(救いようがないんだよ。寝てるから終わったら読んでね♪)



結局ガッツさんが戻ってくるまで、ガレットとの討論は続くのだった。


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このような拙い作品をお読みいただきありがとうございます。

想定以上の方にお読みいただき、正直作者自身も戸惑っていますが、これから頑張りたいと思います。


さて、実は本作品の説明には毎週日曜日18日時の更新と記載しているんですよね。ただ、まだストックもあるので可能な限りでこのペースは維持したと思います。


最後になりましたが、本作が面白いと感じられる限りで構いませんので、ガイアとアルの物語を読んでいただけますと幸いです。宜しくお願い致します。


…え?これが最新話だろって?そうですねその通りです。なので今日中にもう一話更新します。私からできるわずかながらのお礼です。お楽しみ頂けると幸いです。

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