アイリスの恩返しなんだよ
次の日が来た。柔らかな毛布の誘惑を断ち切って俺は起き上がる。
「シュルルー♪」
「アイリス!元気になったみたいだな。よかった。」
アイリスに声をかけながら、俺は朝の水やりの準備を進める。とはいえ、服を着替えてじょうろを持つだけの簡単な準備だけどね。
「ちょ、アイリスくすぐったいって」
アイリスが着替え終えた俺の足を器用によじ登ってくる。そうして昨日同様、肩の上にたどり着くと、満足そうな表情を浮かべている。
「ついてくるか?」
「シュルルー♪」
そうして俺たちは、恵みの水を求めて朝の散歩に出かけた。
「あんまり遠くに行くなよー!」
「シュルー♪」
川に到着するや、アイリスは嬉しそうに水中へ潜っていく。それにしても、水中でのアイリスは生き生きとしているな。それに動きも機敏だし。もしかしてアイリスは水辺に棲んでる魔物なのか?
「シュールル♪」
ともあれ、これだけ楽しそうしているアイリスを見てしまうと、牧場にも水辺を作って上げたくなるな。でも、そうなると水路からの準備しないと。それにせっかくなら、水車小屋とかも作って作業を自動化もしたいところ。
(それはすごくいいんだよ。間違いなくやりたいことリストに追加なんだよ。うまくいけば母様の加護も強化されるんだよ。そうだよねアル!)
そうなんですね。初めて知りました。それでガイアさん?そろそろ女神様からもらった加護について説明いただけないでしょうか?
(そのシステムは現在準備中なんだよ。えっと確か、めんてなんす中?)
頼むから近日に実装してください。
そんなくだらないことを話しながら、アイリスが満足して戻ってくるのを待つのだった。
さてお水を…ってなんか成長早くない?
いや、家を出る前にも発芽してるなって思ったよ。ただ、発芽自体は大体3日目~7日目ぐらいと知っていたから、2日目に発芽したというのは早いけど、気にするほどでもなかったんだ。
でもね、なんで既に子葉を超えて本葉が生えてきてるんですか?
これでも理系の俺、生物の基本知識として植物の生長過程ぐらいは覚えていますよ。その常識によれば、初めて生える葉っぱこと、
(よかった、効果あったんだよ!無事実装なんだよ)
まさかのスピード実装!かなり助かるけど!てか、この速度で成長するのに、まだ強化が残ってるんですか!?何それすごい!
(強化の内容はまちまちなんだよ。できれば何をすれば何が得られるかわかる機能が解放されてほしんだよ!)
あ、まじでガイアさんも知らない案件でした。でも確かにその機能は早く欲しい。
『そうだ!せっかくなら牧場に私を祭ってください。そうすればもっと近くで二人を見れますので、ぜひぜひ♪』
ふと思い出したのは女神様との別れ際の言葉。もしかして、ヒントだったりするのか?だって、見るだけならガイアがいればできるみたいなこと言ってたし、それに俺たちの金銭状況を理解している女神様が、あの話をするとは思えないんだよね。
まあ、今は水やり水やりっと。
「シュル?」
撒かれる水を見ながらアイリスは首を傾ける。
「こうやって、おいしい野菜を育てるんだよ。」
「シュルルー」コクコク
そう説明してあげると納得した様に声を上げる。さて、水も無くなったし水を汲みにいかないと。
「アイリスまた川行くぞ。」
そう声をかける同時になぜか肩から降りるアイリス。そのまま腕を伝ってじょうろの前へ行くと、魔力を操って水を生み出しじょうろの中を満たしていく。
(すごいんだよアイリス!)
まさかのアイリス、氷だけじゃなくて、水まで生み出す!これで川にわざわざ汲みにいかなくても水やりができるようになる!いや、それより先にやることがあるだろ!
俺は感謝の気持ちを込めてそっとアイリスの頭を撫でる。
「シュルー♪」
声を上げて喜ぶその姿は大変可愛らしかった。そして、そんなかわいいアイリスのために、一日一度は川に行くことを心に誓うのだった。
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