薬草採取クエストなんだよ【2】

「ゴブリン発見です!数は10!」


「少し数が多いな。シルビアはサポート。コレットはシルビアを待って前に出てくれ。アルは俺たちの守りを中心にいけそうなら遊撃。俺は魔法で数を削る!」


「「OK」」


「任せるし!行くよ新作ディレイアロー!」


シルビアが腰に着けたアクセサリーに触れる。その指の間に現れる光の矢。どうやら腰に付けたアクセサリーは全て魔道具のようだ。


慣れた手付きで放たれたその矢は、着脱地点を中心に光のドーム展開。そして、それに触れたゴブリンはなぜか減速している。なお、原理は不明。


「今回は成功だし!コレっちには影響ないから行っちゃって!」


「ナイスです!シルビアちゃん!」


謎空間に怖れなく飛び込んだコレットが、一瞬で2体を切り捨てた。


いや、デバフを受けて遅くなってるのはわかるけど、それでも驚きの早業である。これ俺必要か?


そんなことを考えているとゴブリンが散開して、コレットを避けるように動き出した。彼女も必死に右に左に動いているが、相手は8体もいるため苦戦している。


やっぱり俺の出番もあるようだ。


「せい!やあ!あ、1体抜けました!アルさんお願いします!」


「OK!」


身構えていたので動き出しスムーズ。そこからワン!ツウ!からの!空いた胴体に抜き手!


武術のレベルが上がったからなのか、抜き手がゴブリンぐらいなら貫通するようになってるな!やはりスキルの恩恵は大きい!


「【ウィンドバレット】展開。これで残り4だな。」


前衛を見れば既に6体目のゴブリンが消滅していた。ここまで来たら消化試合。適当にやっていても片付くと思うけど…


「コレット!1体こっちで受け持つ!」


「お願いします!」


まあ、全部をコレットに任せるのはあれだし俺も前にでる。そうして、追加でキル数を稼ぎながら、ゴブリンを殲滅していった。




「やはり人数が多いとやりやすいですね!」


「ああ、俺とコレットだけではあの数を対応するのは…無理ではないだろうが、もう少し時間がかかるからな。」


戦闘後にそんなことを話す2人。とは言え、キルスコアはこの2人がぶっちぎりである。


「そうは言っても、半数はお二人が瞬殺しているところが大きいんじゃないです?」


「それが悔しいことにそうではないだ。まず、魔法はどうしても魔力を消費する。一撃は強力だが、使いどころは気にしないといけないだ。」


「なるほど、リソース回りの話ですね。」


「そうそう。だから、いつもなら私が一人で10体を相手して、必要な時以外はフィリップが魔法を使わないの。でも今回はフィリップ君のリソースが切れても、わたし含めて3人で補助できるでしょ?もう、安心感が全然違うよね!」


「…俺も近接を練習すべきなのだろうか。」


「まあ、フィリップはその辺は絶望的だし、大人しく魔力を増やしたら?」


「ぐは!」


胸を押さえて苦しむフィリップ。コレットは…なぜか楽しそうにしている。多分これが二人の普通なのだろう。


「そういえばアルっちは武器を使わないんだね!」


「俺はコイツが慣れてるだ。」


俺は拳をつくってアピールする。因みに俺以外のメンバーは、コレットは短めの二振りの剣、シルビアは弓、フィリップは杖となっており、武器を持ってないのは俺だけだ。


「アルっちはステゴロなんだ。以外って言うか、レア物って感じ!」


「あ、やっぱりそんな感じなんだね。ギルドでも武器を持ってる人が多いからなんと無くそんな気はしてたんだけど、やっぱりそうなのか。」


「まあ、武術自体は習うものも多い。ただ、それは武器を失ったときの保険や、リーシャルとしてだ。メインが格闘というのは間違いなくレアだ。」


いつの間にか復活したフィリップが追加の説明をしてくれる。まあ、普通の感性があるなら武器は持つべきだし、その方が強くなるのも早いだろう。むしろ多くの時間を武器なんてない平和な世界で過ごしてた俺が例外なのだ。


それから、なぜか会話はフィリップの近接用武器に移動して、最終的にコレットの私が守ります宣言により、フィリップ本日2回目の精神的挫折を味わうのであった。




「見つけました!アルさん!これが薬草です!」


「へーこれがそうなんですか。」


「正式名所は活性草だな。そのままでもわずかながら、自然治癒能力を強化してくれる。とてつもなく青臭いがな。とっ!こっちに魔力草もあるか。こちらはそのままでも、多少の魔力を回復してくれる。なお、そのままだとえぐ味がすごすぎて食えん。」


なぜか食レポ付きで紹介された薬草は独特な形をしていた。これなら俺でも判別がつきそうである。


「因みにアルよ。形だけで判断しているとアラシグサを拾うことになるから注意しろ。見分ける方法は魔力を含んでいるかどうかだ。」


あ、確かに見せて貰った活性草にはわずかながら魔力が含まれている。ただ、その魔力量は周囲の魔力量とそこまで変わらず、こうして手に取ってみないとわからないレベルだ。


「ふむ。森の魔力が増えたことで薬草は増えているようだ。」


「みたいだし!」


しかし、この兄弟にはそれでも薬草の魔力がわかるらしい。すごいぞフィリップ!近接ができなくても十分じゃないか!


「この辺は結構空けてるし、手分けすることを提案するし!」


「確かに。フィリップ君どう思います?」


「離れすぎなければ問題ないだろう。」


「なら、バランスを考えて、うちとアルっち。コレっちと兄貴でわかれるし!アルっちいくよ!」


俺はシルビアに手を引かれながら、二人と別行動を開始した。




「意外とシルビアちゃんって積極的?」


「いや、あれは多分いつものお節介だな。というか、違うといっているだろう…」


「??よくわからないけど私たちも収穫にいきましょう!」


「ああ、兄として、先輩としてあの二人に収穫量で負けられない。」


「フィリップ君はそういうところ子供のままですよね。」

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