薬草採取クエストなんだよ【それから】

「おーいアルっち生きてる?」


「なんとかー」


魔力は空っぽでだるいし、肉体は反動で痛いけど、それ以外はかすり傷程度。ほぼ完全勝利である。


そんな俺たちは現在、フィリップが周辺探索中のため、ガーデンベアーと言う熊を倒した地点で待機しているわけだ。


因みに大量のドロップ品はデコが全部格納してくれました。デコマジ有能。


「うちに任せるし!」


シルビアが弱い魔物が嫌がる魔力を周囲に放つ魔道具を起動する。結果、今はゴブリンすらよってこない。シルビアもまた有能であったか。



「すまん待たせたな。」


「いえ、それよりなにかわかりました?」


「ああ、案の定この先に魔力溜まりかできてた。それも結構規模が大きい。もしかしたらダンジョンになるかもな。」


「ダンジョンって、自然にできるものでしたっけ?」


「まあ、できるといえばできる。ただ、野生のダンジョンの場合は周辺に比べて強すぎる魔物を隔離するためのものなので、一般的にダンジョンと呼ばれるものとは違うがな。」


「そうなの?」


「そうなんだよ!それとダンジョンにしておくと自然と力試しに強者が来るから解消が早くなるって言ってたんだよ!」


あ、さすが関係者。因みにその関係者さんはそれだけ言うと、シルビアとの会話に戻っている。あ、コレットも合流した。


「あー、なんだ。私が言うことではないかもしれないが、隠さなくていいのか?」


フィリップが呆れ顔で問いかけてきた。でもなー


「正直あれだけ派手にやって、今さら隠す理由がなくない?」


「だが、体裁と言うものがあるだろう?」


「いや、別に…これまで隠してたのはガイアのことを説明しても信用されない可能性が高かったからだし、今の状況ならそこまで隠す理由はないよ。何より…」


俺はガイアの方向を見て、言葉の続きを語る。


「アイツが楽しそうなら、それでいいんじゃないかなって。」


「そうか。どうやら俺の考えすぎだったようだ。」


同じ方向に視線を向けたフィリップが、楽しげな三人を見てそう結論付けた。



帰り道は平和そのものであった。まあ、行き以上に騒がしくなったことに、フィリップが頭を抱えていたり、コレットがガイアとシルビアに次回の約束(男性陣には選択権はなかった)すると一幕はあったがこれは平和ということでいいだろう。


ただ、それも村が近づくまで。さすがにこれ以上は不味かろうと、俺以外では認知できない状態へと戻るのだった。




「あの~アルさん?私前回余り強い魔物とは戦わないようにって言いましたよね?」


「いや、今回も緊急事態だったので…」


「いや、2回目の依頼でこれは普通におかしいからな?現在のお前さんの言葉に信頼これぽっちもないぞ」


そらそうですよね。前回はゴブリン討伐に出て剣脚鳥、今回は薬草取りに行って操虫熊と官狼と大量の蜂蜜。うん、おかしい!ただし、今回は俺以外の目撃情報もある!だから平気!


「いや、先輩。今回は俺たちも逃げることは不可能と判断して戦闘だったんです。」


「いや、お前らも割りと強敵を前にするとバーサークするからな。まあ、本当に勝ち目のない時は逃げることも知ってはいるが…」


「うん、微妙よね」


「まあ、さっきの情報とこれだけのドロップ品の数だ。今回は逃げることができなかったと言うことにしておいてやる。」


「さすがおじいちゃん!話がわかる!」


「ギルドではギルドマスターだっていつも言ってんだろ。」


さて、お分かりの通り現在俺たちはギルドの受付ではなく、ギルドマスターのお部屋につれてこられております。メンバーは我々4人とギルドマスター、あとなぜか前回受付をしてくれたアンヌと森の調査をギルドより依頼されていた、Bランク冒険者のジルさんになります。よく合いますね!


でも、まさか3回目のクエストで、ギルドマスターのお部屋に呼び出しになるとは思わなかった。


(嘘なんだよ、アルは神装を使うって決めた時点で、何となくこうなるって予想してたんだよ!)


だまらっしゃい!それとお前さん、大量のフォレストビーを見ての第一声が「蜂蜜の山ってなんだよ!」ってなんだよ!


(今は関係ないんだよ!)


「とりあえず、全員ランクアップだ。というか、アルはDランクまであげる!アンヌ、すまんが処理をしてやってくれ。」


「はぁ~…、承知しました。では、皆さんギルドカードをお渡しください。」



それからしばらく、俺たちは晴れてランクアップした。あと、各種換金した結果、本日の報酬40万G以上となったのだ。


「と言うことでせっかくだからどこかで打ち上げでもどうだ?」


「いいね!やろうよ!」


「なら、会場は…そうだ家にしよ!そうすれば魔獣たちも一緒に食べれるし!アルもその方がいいよね?」


「えっといいのか?俺としてはそうしてくれると嬉しいが迷惑だったり?」


「そんなわけないだろ。むしろ今日のMVPが喜ぶ方法が最善と言える。そうだな…なら今から20分間は別行動として、各人買ったものを持ち寄るのはどうだ?」


「お、いいね。わたしのセンスを見せてあげるよ!」


そうして俺たちはいったん別行動となった。それにしても…


「よかったなガイア」


(うん…うん!わたし!今最高にうれしいんだよ!)

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