ペテンは剣より強し?なんだよ

スタート地点から村までは5分程度。まあ、その5分が濃厚だったわけだが。さて…


「止まってください!あなた何者ですか!」


なぜ俺は、目の前の少女から剣を向けられているのでしょうか。教えてくださいガイアさん?


(わからないんだよ!?私が出ていった方がいいかもなんだよ!?)


いや、あなたが出てきたらもっとややこしくなります。お願いなので大人しくしててください(なんでなんだよー!?)


さて、とりあえずここは会話を試みるか。大丈夫、何とかなるって…


「ええっとですね。これには…ひえ!」


「どんな言い訳をしても無駄です!この先には既に閉鎖された牧場しかありません。そんな場所を狙って、村に入ってこようとする人間が怪しくないはずがないです!」


おっと!困った反論する要素があんまりないぞ!?仕方ないプランを変更するかー


「なるほど。確かにこの状況では私は怪しいやつですね。疑われるのも納得しました。」


「そうでしょう!そうでしょう!しかし、私が言うのもなんなのですが、さすがに冷静になりすぎではないですか?」


「いや、君の話を聞いた今、素直にそう思ってしまったので。ただ僕自身、ここがどこで、どうやって来たのかわからないのです…」


「え、記憶喪失…え?」


すまんな名も知らない少女よ。TRPGで鍛えた嘘ではないギリギリの情報開示と、想定外の流れを作って会話の主導権を奪うテクニック。死にたくないので、存分に使わせてもらうぞ。


…そういえば地味に言語の壁を感じずに会話が成立してるんだけど、ガイアさんなんかしました?


(こっちに連れて来た時に豊穣神母様がいろいろしてくれたんだよ。たがら、読めるし、書けるはずなんだよ!あと、ついでに10代ぐらいまで若返らせて、身体能力も強化してくれたんだよ!)


はは、聞いてないことまで返ってきやがった。なるほど、くそ雑魚体力の俺がゴブリン相手に全力疾走を維持しながら逃げ切れた理由はこれか!


と、その事の言及は後にして、とりあえず目下、命の危機に対応しなくては。


「…えっと、どうすればいいのでしょうか?確かに状況は怪しいのですが、相手も状況を理解できてないようですし…」ボソボソ


あ、既に対応不要かも、というかこの子思った以上にちょろいぞ?こんな子に警備をさせて大丈夫!?


「えっと、すいません。はどうなるのでしょうか?」


(そういえばさっきから俺って言わなんだよ!?)


僕の方が精神年齢が低く見えるだろ?こういうのは使い分けが重量なんだ。これテストにでるよ?


(計算高いんだよ!後、割と今の状況を楽しんでいるのがよくわかったんだよ!)


褒めるな恥ずかしい。


(褒めてないんだよ!)


左様か。


そうやって、表面上を整えながら、脳内で漫才をしていると状況が変化する。


「コレット?なにをしてるんだい?」


「あ、おばあちゃん。実はこの方が…」


「なるほどねえ。…ふむ、コレットはこのことをじいさんに伝えてきてくれるかい?彼は私が見てるから、ほら急いでおくれ!」


「わかりました!すぐに行って来ます!」


そういってコレットと呼ばれた少女は駆け足で離れていく。それにしても足早いな。もう見なくなった。


そんなことを思っていると、目の前の老婆の視線が向けられる。それは、どこか優しく、それでいて全てを見透かすように鋭かった。


「ほれ、もう嘘は言わんでも大丈夫さね。」


あ、これはダメだ。いい意味で年を重ねた方特有の審美眼を持ってらっしゃる。このタイプは理屈を無視して嘘を見抜いてくるからなー。仕方ない。


「申し訳ないです。騙す気はなかったのですが、生きたかったので…」


「まあ、どうせ出会い頭で剣を向けたんじゃないかい?あの子は思い込みが激しいからねー」


「アハハ…まあ、私も知らなかったとはいえ、このような場所から現れてしまったので仕方ないと思います。」


「そうかい、そうかい。まあ、あの子はすぐに人を信じちゃうからね。怪しそうならすぐに剣を抜くように教えたは私なんだけどね。」


その事実に俺はどう反応しろと?


「それはそれとして、どうやら山神様はあんたを気に入っているようだね。」


!?待ってガイア!お前ってわかる人にはわかるの!?


(知らないんだよ。私は基本的に恐れられる側の存在だから人との交流なんて少なんいんだよ!)


「安心し。これは私以外だとじいさんぐらいしかわからんよ。まあ、今はその話はいい。それで…」


「あ、アルクトスです。呼びにくければアルと呼んでください。」


「そうかい。私はホリーだよ。それでアルはこの後どうするんだい?どこから来たかわからないというのも、ここがどこかもわからないのも本当なんだろ?」


「そうなんですよね。なので、本日はどこかで野営をさせてもらおうかと思ってます。」


「なら、今日はうちに来な。どうせ飯は私が作るんだ。一人増えたところで変わらんよ。むしろ、じいさんがいる時に説明してくれた方が手間が省けるからね。」


そういって、ホリーさんは有無を言わさず決定するのだった。

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