目標は大事なんだよ
既にルーティーンと言ってもいい川への散歩と、アイリスの水浴びを終えて、畑に水を撒いていく。
「アイリス頼むよ」
「シュルル~♪」
いやー、近くに水源があるって素晴らしい。これなら植える植物を増やしてもいいかもしれない。
(でも、アイリスも1日に使用できる魔力量に限界があるから注意なんだよ!)
おっとこれは盲点だった。ご指摘感謝だぜ。まあ、別に急ぐことでもないしのんびり育てていきましょう。
「シュルル~?」
どうしたのって見上げてくるアイリス。そのかわいい仕草に俺は気にするなと、頬を撫でる。
「シュルル~♪」
いやー今日もアイリスはかわいい。
(うんうん♪)
効率化された朝の作業を終え、本日も村へと来ております。しかし、間違いなく地球にいたころより社交性は上がってるよな。と、ここだね。
「お邪魔します~」
「いらっしゃーい。おっと、お前とは初めましてだな?」
「はい、最近牧場の方に引っ越してきました、アルクトスです。長いのでみんなにはアルって呼ばれてます。」
「じゃあ俺もアルって呼ぶわ。俺の名はテッド。よろしくな。」
そういったテッドはケモ耳の生え男性だ。彼が身につけたエプロンには大量の木くずと様々な工具が収めれれ、ザ・職人といった装いをしている。
「それで何用で?知ってると思うけどうちは木材加工専門店。家具なんかは注文聞いてからになるぞ?」
「今日は見積だけお願いしたくて。頼みたいのは鳥小屋と家畜小屋なんだけど?」
「おお、久しぶりの大仕事じゃなんか!でもすまん!小物は俺の担当なんだけど、建築ってなると親父に話を通す必要があんだ。ちょっと待ってろよ。親父~」
「仕事時間は親方って呼べって言ってんだろ!」
「それは俺以外の弟子ができたら読んでやるって言ってんだろ!って久しぶりの大仕事の予感なんだからしっかりしやがれ」
「何だー!また冒険者ギルドが壊れたか!?」
あそこそんな定期的に壊れてんの?
「ちげーって新築だっての!家畜小屋だけど。」
「良いじゃねーか!久々の大仕事だ!お、お前さんが依頼主か。俺はタイロンってんだ。よろしく頼むぜ。」
「アルクトスです。盛り上がってるところ申し分けなんですが、今日は見積で来たんです。」
「なんでい。でも、あの牧場で暮らすんなら家畜小屋以外にも作るものがありそうな予感があるな!」
「マジですか。親父の感は当たるからな。アル様その際は是非内を御贔屓に。」
「そうだ、贔屓にしろよ!で、見積だったよな。そうだな、サイズにもよるが鳥小屋なら素材込みで100000G家畜小屋なら300000Gってところだな。」
「やっぱり結構しますね。」
「まあ、魔獣関連はつなぎ留めておくための魔道具がかかるからな!持ち込みがないとこんなもんだ。」
魔獣?なんでここで魔獣が?
(アル、この世界にいる獣は基本的に魔獣か魔物なんだよ。)
なるほど、うち人と暮らせるのは魔獣だけだから、畜産は魔獣を育てることになる。そうなると魔道具ってのは周囲に継続的に魔力を流す装置ってことだな。
「ちなみになんですけど、その辺の魔道具なんかを持ち込むとしたらどのくらいでしょうか?」
「それなら、鳥小屋なら一番小さいので30000Gってところだな。家畜は広くなるから50000Gぐらいか?」
なるほど。やはり結構魔道具のウエイトは高いようだ。なお、今の俺の財産は10050Gである。どっちにしろ金が足りない。まあ、焦ることではないのでゆっくり頑張ろう。
「わかりました。頑張って溜めてきます。」
「期待してるぜ!」
「アル無理はすんなよ?あと、あの牧場小屋だと家具なんかも必要になるだろうしその時は俺に行ってくれよ!」
「ああ、正直机も寝床も無くて床上で生活してんだ。多分そっちを先に依頼しに来る。」
「アル、お前…親父!この出来損ないは処分か?」
「そうだな!それは出来が悪くて売りに出せないし処分だ!」
「だってよ、外行くならアルの方で処分してくれないか?」
そういって、テッドは小さな机と椅子を指さす。なんと言うか、粋人たちだ。というかこの村の人が基本的に良い人過ぎて頭が上がんない。
「そんじゃ、俺はこれで!次は是非依頼してくれよ!」
そういって、処分する(建前)の机と椅子を残してテッドとわかれた。
さてと、これどうやって持って帰るか…
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