母様登場なんだよ!

とりあえず、やるべきことを終えた俺たちは、ガイアの要望で教会へと訪れていた。


(アル!私のわがままを聞いてくれたありがとうなんだよ)


まあ、地球にいたころは神社やお寺に行くのは好きだったし、割と楽しみである。なので、この選択は2人の総意なので気にするな。



「こういう静かな空間っていいもんだな。」


開け放たれた両開きの扉を抜けると、祭壇へと続く道が見えた。その両隣には長椅子が並べられ、日差しを受けて輝くステンドガラスが礼拝堂内を彩っている。


周りを観察してみれば、長椅子に座った人々が思い思いに祈りを捧げている。祭壇には神像と思われる大きな石像が一つ。それが一際大きなステンドガラスに彩られ、幻想的な雰囲気を生み出している。


まあ、折角なので石像の近くの椅子に座ろうと思い、祭壇の方へと進んでいく。すると、遠目では見えなかった、小さな木像が飾られていることに気がついた。おそらく、石像が主神で周りの木像が従う神々のなのだろう。


(そうなんだよ。)


回答ありがとう。ちなみにガイアが仕える神はどれなの?


(小さい像の中心がそうなんだよ。)


ああ、あの母性が非常に大きな女神像ね。なら、あの像に向かって祈ることにしよう。そう決めた俺は周りの人を真似て、目を瞑り、祈りをささげた。瞬間、真っ暗な視界が白く染まった。



「母様ー!」


「あらあら、ガイアちゃん。うまくいったようね~♪」


祈ってしばらく、ここ最近聞きなれた声と初めて聴く優し気な声。うん、なんか嫌な予感がするぞ!


俺は恐る恐る目を開く。そこで俺の視界に移ったのは、協会ではなく、真っ白ななぞの空間であった。


え…何これ?


「あら、びっくりさせちゃったかしら?」


声をかけてきたのは…優し気な女性。暫定豊穣の女神様である。え、なんでそう思ったか?そら、体の一部が木造と同じだったから…


「アル?」


あ、ごめんなさい。ふざけ過ぎました。…それで、このガイアの声をした可愛らしい女性は誰だろうか?


「ひどいんだよ!あんなに一緒にいたのに!?」


「いや、俺が知ってるガイアはドラゴンなんだが?すぐに察しろは無理すぎだと思うんだが?というか本当にガイアなのか!?」


白い髪、赤い瞳。そして頭の黒い角と同色の太い尻尾。うん、要素はあるけど、一目で気づけるか!


「あらあら、二人とも仲がいいのね。」


「ああ、母様ごめんなんだよ。」


「いいえ、ガイアの楽しそうな姿を見れて私はうれしいのですよ。しかし、いつまでも自己紹介をしないのはいけないですね。初めまして、龍田流星さん。この世界ではアルクトスさんと呼ぶべきででしょうか?私は、豊穣と生命の女神デメテラと申します。」


「ご丁寧にありがとうございますデメテラ様。私のことは気軽にアルとお呼びください。」


「ではアルさんと呼びますね。アルさんも気軽に私のことはデメテラか、もしくはママって呼んでくださいね。」


うん?ママ?困惑する俺を置き去りにデメテラは話を続けている。


「本当ならもっといろいろ話したいのですが、ここにいられる時間は少ないので先に重要な用事を済ませましょか~♪アルさん、少しこっちに来てくれませんか?」


なんだかよくわかってないが、俺は大人しくデメテラさんの正面に立つ。…あれ?なんか俺光ってない?


「はい終了です。ご協力ありがとうございました。」


「あの、何をしたんですしょうか?」


「私から祝福を少々。これでも私は豊穣の神。農場をされるならきっと役に立つはずです。そして、ぜひガイアの助けになってあげてください。」


うわ、ずるいわ。そういわれたら受け取っておくしかないじゃん。仕方ない、この恩は農業で返そう。ついでにお金ができたら教会に募金することにしよう。


「母様!ありがとうなんだよ!私頑張るんだよ!」


「ええ、私はガイアちゃんを応援していますよ。…あら、時間が過ぎるのは早いですね。もう時間みたいです。」


見ると俺の体が薄くなっている。おそらく時間切れなんだろう。


「ではアルさん、ガイアちゃん。また来てくださいね。そうだ!せっかくなら牧場でも私を祭ってください。そうすればより近くで二人を見れますので、ぜひぜひお願いします♪」


「わかりました。いつになるかわかりませんが必ず。」


「ええ、楽しみにしてますね。」


その回答を最後に俺の意識は薄れていった。

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