農業を始めるんだよ
少しずつ意識が現実へと浮上する。
「大丈夫ですか?」
開いた瞳に移ったのは、美しい青色の瞳。え…瞳?
「うわ!」
想定外の状況に反射的に後ろに下がろう体が、椅子の背にぶつかる。痛いけど、覚醒したばかりの脳はそれを処理しきれていない。てか、なんだ、この状況!?
「あ!驚かせてしまい申し訳ございません。ずいぶん長くお祈りされていましたので、念のため声をかけさせてもらったんですが…」
え、そんなに時間が経過している?そう思って周りを見回せば、来た時の顔ぶれが変わっている。
「えっと、どのくらいいました?」
「15分ぐらいでしょうか?熱心の方でしたら30分ぐらい祈られる方もいますが、初めて見るお顔でしたので、声をかけさせていただいたのです。」
どうやら優しいシスターさんのようだ。しかし、こういう時って都合よく時間の進みが遅くなるもんじゃないの?ガイアさん?…あ、反応がない?
「そうでしたか。この街で牧場をさせていただくことになったので、豊穣の女神様へご挨拶に伺ったのですが…どうやら、祈っている間に少し眠っていたのかもしれません。おっと、すいません。このようなことはシスター様にお話しするような内容ではなかったですね。」
「だったのですね。もしかしたら、神様の世界に行かれていたのかもしれませよ?」
「…そうなのでしょうか?正直、私にはよくわかりませんね。」
「私にも本当のところはわかりません。ですが、そう思う方が夢があっていいと思いませんか?」
「確かにそうかもしれませんね。おっと、まだ自己紹介もしていませんでした。私はアルクトス。気軽にアルとお呼びください。」
「私はリーナって言います。私もシスターになったばかり若輩者で…なので、お互い大変だと思いますけど頑張りましょう!」
「ええ、頑張りましょう。では、本日はまだやることがありますので、これで失礼させていただきます。」
「あ、ごめんなさい。少し話過ぎちゃいました。またマザーに怒られてしまいます。アルさん!今度会ったときは牧場での生活教えてくださいね!」
そういってリーナは教会の壁側に置いていたバケツを手に取って小走りでさっていた。
それから、俺たちはホリーさんから借りた資金でいくつかの種と農具を購入し、牧場に戻ってきた。その過程で鍛冶職人見習いのガリルや、雑貨屋のエルフ兄妹フィリップ&シルビア。それに、魔獣を取り扱っているガッツさん。あ、コレットにも再開したよ。
まあ、彼らに関する話はまた今度にして、今は農業、そう農業なのです!
なのでガイアさん?そろそろ機嫌を直していただけませんか?
(別に怒ってないんだよ?でも、さすがに見た目が変わっただけでわからなくなるのはひどいと思うんだよ?)
それを、機嫌が悪いと言うんだぞ?あと、人間は視覚に大きく依存してるから、見た目が変わったら基本わからないんだよ?
(それでも気が付いて欲しいだよ!)
まあ、次回があったら頑張るよ。なので許してください!この通り!!
(まあ、今回は許してあげるんだよ)
そんな一幕もありながら、俺は鍬を振るって大地を耕していく。しかし、スローライフ系だと大地が固すぎて耕せなかったりするんだよな。
サック サック サック
良かった刃が入る。それに、土が粘土状態になっていたリ、乾きすぎてたりもしない。これならとりあえず農業は開始できそうだ。
サック サック サック カツン サック サッカツン!
でも、やっぱり石はあるよな…ガイア、面倒なのでその辺を一気に解決する魔法とかってないの?
(多分あるんだよ?)
あるんだ…ちなみにガイアが使えたり?
(私がやると多分この辺がまとめて消えるんだよ?)
ですよね。仕方ない手抜きはせずに地道にやりますか。とりあえず今は、目についた石ころは端に避けてっと。
(魔法はどうするんだよ?)
そっちはそのうち村の図書館で調べてみるよ。フィリップがその辺詳しいみたいだし、そっちに聞いてみてもいいかもね。
サック サック サック …
何もない牧場にしばらく規則的な音が響くのだった。
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