第31話
文官してたら姫騎士に脳筋だとバレて前線送りになった。しかも4つの軍団を統括することになる戦時混成軍団の副将として。
ジェズ本人ももはや意味がわからない状況の中、城砦都市バスティオナ方面に向けて駆ける第78戦時混成軍団の第1陣騎馬/チャリオット1000騎。
部隊の先頭をジャミールやアルファズ隊の面々が率い、最小限の物資をチャリオットに積み込んだ彼らは一路バスティオナに急ぐ。
そんな状況の中でジェズは横を駆けるレネ姫にぼやいていた。
「あの状況では断れないですよ」
「嫌だったのか?むしろ感謝して欲しいくらいなんだが。これでお前も自由に動けるだろ?」
ダメだこの姫さん、全く悪気がないどころかむしろドヤ顔じゃないか。ニコニコした表情でジェズのぼやきに応えるレネ姫を見てジェズは改めて諦めた。開き直ったともいう。
近くを駆けるエリンやリリーからも茶々が入った。
「これで良かったんじゃないの?実際能力的にはジェズが適任だったと私も思うよ」
やや揶揄い気味にエリンが声をかけ、
「そうですね、エリンが言う通りノーマン卿は今回の立場に対して実績、能力共に申し分ないと思います」
とリリーが真面目な事を言ったかと思うと
「ところで副将をお受けになった際の騎士の誓いの口上は非常に良かったですね?聞いててまるで結婚のプロポーズかと勘違いしそうになりましたが」
非常に良い表情をしながら揶揄ってくる。それを聞いたレネ姫は「おい」とやや頬を染めながら満更でもなさそうにリリーを嗜め、エリンは一見するといつも通りの穏やかな表情を浮かべつつも親しい仲の者が見ればわかる程度には不機嫌になっていた。
「あのなぁ…」
こんな状況なのに呑気なもんだと呆れつつ、いやむしろこんな状況だから敢えて暗くならない話題を提供してるのか?とリリーとの付き合いがあまり無いジェズは彼女の本意がわからず戸惑っていた。
なおリリーの頭の中は極めてシンプルである。陛下と王妃に会うたびに「レネの婿候補は見つかったか?」と聞かれていたリリーは大概面倒になっていた。
レネが20歳を超えてからはそれに拍車がかかっていたため、今回の件をレネの気が変わらないうちにさっさと陛下と王妃に報告しないと。それからジェズも逃げないように外堀を埋めていこう。
そのためにも邪魔する魔物はさっさとぶっ飛ばしてやる。モチベーションの源泉はやや特殊ではあったが、リリーもまた次の戦いに向けて気合を入れていた。
・ ・ ・
場面は少し戻りバスティオナから届いた凶報によりレネ姫がロイヤルオーダー11を発動して全権を掌握した直後。
部隊再編と指揮官の任命を指示した彼女はすぐさま行動に移していた。
「第78戦時混成軍団の第1陣は1時間後にバスティオナ方面に向けて出撃する。第2陣も6時間以内に出撃せよ。ジェズ、細かい調整は任せる。まずは1時間で出るぞ。私も第1陣で出る」
そう伝えるとレネ姫は姿勢を正し、
「すでに多くの同胞の命が失われている可能性が高い。だがこれ以上の被害を出さないためにも諸君の力を貸して欲しい。ではいくぞ。全軍、準備に取り掛かれ」
そして最後に一息吸うと、
「諸君、死力を尽くせ!!」
「「「「「おう!!!!」」」」」
レネの宣言に応える居並ぶ諸将たち。全員の協力のもとに速やかに進軍の準備を指揮したジェズは姫の指示通りに1時間以内に騎馬/チャリオット隊の準備を整えた。
オスカー率いる第2陣歩兵2000も順次作業が進む中、レネ姫率いる第1陣がグレイシアンから予定通りに出撃。
ジャミールやアルファズ隊が先頭となりジェズやエリンの補助を受けながらルート選定をしてバスティオナへ急いでいた。
・ ・ ・
レネやジェズ達がグレイシアンを経ってバスティオナ方面へ向かう4日前のこと。ちょうどジェズとジャミール達が魔物軍のトンネルを発見し破壊したタイミングとほぼ同じ時期である。
このタイミングでバスティオナは陥落した。グレイシアンとほぼ同様に魔物軍の包囲を受けていた城砦都市バスティオナは、これまたグレイシアン同様に籠城戦を選択。
第9軍団を率いるエリオット・クレインもまた、フィン・モーガン同様に熟練の軍団長であり手堅い守成が持ち味の将だった。
彼も第7軍団第2連隊の到着を待って敵を挟撃、殲滅するつもりだったのだ。だがこの方針はあっけなく崩れる。なぜなら
「オークキングだぁぁぁぁぁぁぁ!」「グルァアアアアアアア!」
バスティオナ城砦都市内の地盤が突然陥没。そしてその穴からはオークキングに率いられた数千体にもなる魔物軍が一斉に都市内に侵入。
ここからが地獄である。
この都市内への侵入成功に呼応する形で城壁外からの攻撃も激化。城内への侵入を許した敵の数、およびオークキングを見たエリオットはしばらく逡巡した後、城砦都市バスティオナの放棄を決断。
城砦都市内に残っていた非戦闘員を全軍で守らせつつ城塞都市から脱出し、コハネ方面へ退却する事を決めた。もちろん自身を殿軍として。
「急げ!非戦闘員を優先して逃がせ!!」
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