第20話
オスカー・ベイリー率いる第8軍団第2連隊1500名が城塞都市グレイシアンから出撃。この1週間弱、籠城戦に徹していた彼らの士気は高い。
城門が開くやいなや、堀にかかる跳ね橋が完全に降りきる前に全軍の先頭から飛び出したオスカーが身の丈を超えるハルバードを振り回しながら敵陣の真っ只中に切り込んでいく。
連隊長の突撃を見た第2連隊1500名の士気は更に一気に上昇しオスカーに遅れまいとその後に続いた。
城壁の上からは弓兵や魔法兵が援護射撃を行い、オスカー達騎馬隊の進行方向や周囲の敵に矢や魔法の雨を降らせていく。開け放った城門周辺には重装歩兵部隊が展開し、敵が城塞都市内に侵入しないよう簡易陣地を構築。
そしてオスカー含めて500騎の騎馬隊は城壁からの支援射撃や重装歩兵部隊の後方からの支援を受けながらも敵陣を切り裂いて行く。
オスカー率いる第2連隊、その特徴はなんといっても"重装備"につきる。オスカー自身も巨大なハルバードをぶん回して敵陣で暴れ回っているが、その周囲のオスカー直掩部隊の面々も馬上槍や大剣を振り回しながら血路を拓いていく。
更にその重装備を何よりも特徴づけるのが、
「チャリオット隊、オスカー隊長に遅れるな!!!!!」
馬2頭仕立ての戦車からなるチャリオット隊。オスカーが楔を打ち込んだ敵陣の亀裂を押し広げていくかのように突撃していくのが第2連隊副官ソフィア・バーネット率いる重装戦車部隊である。
オスカー率いる重装騎馬隊、ソフィアが率いるチャリオット隊の総勢500騎がこれまでの鬱憤を晴らすかのように戦場を駆け回る。
魔物軍も反撃を試みようとするが、大軍が城塞都市全体を囲うように展開していたためにどうしても初動が遅れており短期的な局所戦では不利な状況となっていた。オスカー達も構築された陣地や堀などは上手いこと回避しつつ騎馬隊の長所を活かせる動きをして敵の注意を惹きつけていく。
そんな状況の中。局所戦で蹂躙される友軍の状況を見かねたオークジェネラルやオークウォーリアの精鋭部隊がオスカーめがけて突撃していくが、その巨体めがけてソフィア率いるチャリオット隊から幾筋もの魔法攻撃が放たれる。
度重なる重い攻撃、爆発に怯み、傷つくオークジェネラルやオークウォーリア達。その隙を見たオスカー達は陣形を整えると一気に突撃。
馬上でハルバードを振り回しながらオークウォーリアを吹き飛ばし、吹き飛ばされたあるモノはオスカーの後に続くチャリオット隊の魔法攻撃で爆散し、またあるモノはチャリオットに轢かれて絶命する。
その勢いのままに一気にオークジェネラルに吶喊したオスカーはハルバードを裂帛の気合とともに叩きつけるが、
「はぁあああああああああ!!!!!!」「ガァアアアアアアア!!!!!!!」
オークジェネラルも咆哮とともに手にした大剣で迎え撃つ。そのままお互いの全力を出したまま打ち合うこと数合。ハルバードと大剣がぶつかり合うごとに戦場に大きな金属音が響き渡り火花が散る。どちらも決め手に欠ける中、
「ソフィア、少し時間を稼いでくれ!!!!」
オークジェネラルから少し距離を取ったオスカーがソフィアに支援を頼んだ。オスカーとスイッチするようにオークジェネラルと対面したソフィアはチャリオットを器用に操りながらも馬上槍でオークジェネラルを牽制し、ソフィアと同じ戦車に騎乗するクララ・ベネットが至近距離から攻撃魔法を打ち込む。
彼女たちが時間を稼いだ隙にオスカーは
「不屈の力、我が体に宿れ。力の源となる新たなる門を開き、鋼の如き強靭な肉体を我に与えよ。耐え忍ぶ力、我と共に。第5階梯身体強化魔法、鋼鉄の絆!!!!!」
身体強化魔法の詠唱を完成させると共にオスカーの体を魔力によるオーラが包む。それを見たソフィアとクララはチャリオットを一気に走らせてその場を離脱。
「喰らえやぁああああああああああああ!!!!!!」
普段の冷静さからはあまり想像がつかない咆哮を上げながらオスカーはオークジェネラルに斬りかかり、そして数合の打ち合いの末にその首を討ち取った。
・ ・ ・
「そろそろか」
戦場の様子をずっと伺っていたジャミールがアルファズ隊全員に突撃準備の合図を出した。彼らは昨日トンネルを崩壊させた後に戦場を離脱し、敵の勢力圏外で野営。夜から昼前までしっかりと休息を取った後、グレイシアン城内に情報を届けるべく昼過ぎにグレイシアンから視認できる範囲に進出。
なおグレイシアンへ情報を届ける部隊とは別に、ジャミールはテオに10騎与えてこれまでの経緯を第7軍団本隊へ伝えるための伝令として派遣した。そのため今ここに残るはアルファズ隊70騎+1騎。
彼らアルファズ隊が何らかの情報を持っていて、グレイシアン側と接触したい意図に気づいてくれた第8軍団側が城門を開き敵陣に突撃してから数十分。グレイシアンを囲む包囲網の一部に綻びが見られそうになっていた。
グレイシアンを囲むのは数万体の魔物の大軍ではあるが一点突破に絞ればその包囲網の一部を一時的にであれば破ることは可能。そう考えたジャミールやジェズの読み通りの展開となりつつあった。
ただしタイミングを見誤れば味方に甚大な被害が出るような作戦である。流石最前線を守る第8軍団と内心で称賛しつつジャミール達はついに行動に移す。
「アルファズ隊、一気に敵陣を突破して第8軍団騎馬隊に合流するぞ。今回は全ての敵は無視してとにかく合流を優先。合流後は恐らくだがそのままグレイシアン城内に撤退する。全員気を引き締めていくぞ」
アルファズ隊70騎+1の表情を確認したジャミールは一つ頷くと
「よし、じゃあ行こう。全軍突撃っ!!!!!!!!!」
第8軍団が暴れまわる戦場に向かって全速力で駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます