第55話 芦北
そして、日曜日。俺と弥生は芦北に来ていた。ここは『放課後ていぼう日誌』の舞台。アニメ化された場所が何カ所もある聖地だ。俺は朝から一旦熊本駅まで行った。そして、そこで弥生と合流し八代駅まで戻る。俺は行ったり来たりすることになるが、弥生と一緒に居られる時間が長くなるから望むところだ。そこから肥薩おれんじ鉄道に乗り、
「うわ、ここすごいね!」
弥生のテンションが上がっている。弥生の今日の格好はもちろん眼鏡にベレー帽だ。佐敷駅は小さい駅だが、構内には「放課後ていぼう日誌」の原画がたくさん展示されている。弥生は写真を撮り始めた。俺ももちろん撮る。
「ほんとに聖地に来たって感じがするね」
「この駅自体が聖地だからな。ちょっと外に出てみようよ」
俺たちは駅の外に出た。
「うわあ、そのままだ」
駅はアニメに出てきたそのままでそこに存在していた。古びた小さい駅だが、アニメを見た人にとっては特別な場所になる。俺たちはまた写真を撮った。
そして、俺たちはそこからレンタサイクルに乗った。ここはレンタサイクルを貸し出しているので車が無くても聖地巡礼には困らない。
俺たちは、まず昼食をとるためにイタリアンの店に向かった。そこは登場人物の一人・夏海の実家で出されている設定のナポリタンが食べられるお店だ。俺たちはもちろん2人ともナポリタンを注文した。
「そういえば、光輝は『放課後ていぼう日誌』の推しは誰なの?」
弥生が俺に聞く。
「誰だと思う?」
「うーん、眼鏡の大野先輩かな」
「はずれ、夏海だよ」
「え、そうなんだ」
俺は眼鏡キャラが好きというイメージだっただろうけど、にもかかわらず俺の推しは違っていた。
「意外だった?」
「ううん。だって、夏海も眼鏡掛けてるシーンあるでしょ」
そうなのだ。夏海は普段は眼鏡を掛けていないが家ではかけている。
「う、バレたか」
「うん。それに髪型も」
「え?」
「大野先輩より夏海の方が私に近いよね」
「うっ」
確かにそうかも。性格は全く違うが、髪型は近かった。結局、弥生に近いキャラを選んでたか。
「ふふっ」
弥生は笑った。
「じゃあ、弥生の推しは誰なんだよ」
「私も夏海かな」
「そうなんだ」
「うん。だって主人公の友人キャラだもん」
確かにそうだ。そして俺もそういうことか。
「お互いぶれないな」
「そうだね」
ナポリタンはとても美味かった。
そして、俺たちはすぐ近くの釣具屋に向かう。ここはアニメでは「たこひげ屋」として出てくる釣具屋だが、今は『放課後ていぼう日誌』のグッズも売っているらしい。
「ここもアニメそのままだね」
「ほんとだ!」
店の名前は違うが外見はそっくりだ。
そして俺たちは店内に入る。すると、入ってすぐのところに『放課後ていぼう日誌』のグッズがたくさん売られていた。
「すごい! こんなグッズ、熊本市内のアニメショップにも無かったよ」
「確かに。全部初めて見るな」
俺たちは興奮して、グッズを見た。だが、どれを買うかは非常に迷った。俺はTシャツを、弥生はアクリルスタンドをいくつか買った。
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