第54話 月曜の昼

 月曜の昼休み、やはり俺たちは6人で集まっている。だが、今日からまた席の移動があった。

 上山、弥生、俺で並んでいたのが、俺と上山が席を交代したのだ。これで、上山は太陽と向かい合うことになる。つまり、俺、弥生、上山の席と井端、里内、太陽の席が向かい合うようになった。


「自分の希望で移動してきたんだけど、何かこの席照れるわね」


 上山が言う。


「そうか? 俺は嬉しいけど」


 太陽が上山に言った。


「私も嬉しいけど……正面に太陽君が居るとなんかね……」


「デートの時はいつもだろ」


「そうだけど、学校で太陽君と向かい合ってるなんて……」


「あー、もう2人の世界か」


 俺は太陽と上山を見て言った。


「な、何よ。いいでしょ、付き合ってるんだし」


 上山が言い返す。


「まあな、でも――」


 そのとき、教室に誰かが入ってきた。生徒会長・高山凛花たかやまりんかだ。


「太陽君!」


「生徒会長……」


「あなた、何しに来たのよ」


 上山がにらむ。


「いや、太陽君に彼女が出来たと聞いたから見に来たのだが……やっぱり上山さんなのか?」


「そうよ。私じゃ悪い?」


「そんなことないぞ。おめでとう2人とも」


「ありがとうございます」


「ただ、私の感情抜きに、太陽君に生徒会を手伝ってもらいたいのは確かなんだ」


「会長……」


「君は優秀だ。カリスマ性もある。是非手伝ってくれないか」


「そうやって、私と一緒に居る時間を減らそうっていうことでしょ。そうはいかないわ」


 上山が立ち上がった。


「い、いや、そうじゃないんだ。上山さん、君にも生徒会を手伝ってもらいたい」


「は? 私?」


「そうだ。君は弁が立つ。そういう女子が一人は生徒会に欲しいと思っていたんだ。各部との折衝もあるし、はっきりとした物言いが出来る人材が必要なんだ。是非、太陽君と一緒にどうだろうか」


「私が生徒会とか……やったことないわよ」


「大丈夫だ。私がしっかり教えるから。是非お願いしたい」


「どうしよう……」


 上山が太陽を見た。


「いいんじゃないか、チャレンジしてみたら。俺もサポートするし」


「うん……わかった。やってみようかな」


「そ、そうか! 是非明日の昼休みに生徒会室に来てくれ。待っているぞ」


 そう言って生徒会長は去って行った。


「はぁ。思わず引き受けちゃったけど大丈夫かな」


「文佳なら出来るよ」


 弥生が言う。


「そうそう、頭の回転も速いし、何より口が達者だし」


「悪かったわね」


「褒めてるのよ。向いてると思うよ」


「はぁ。まあ、内申点は有利になるだろうし頑張ってみるか」


「そうだぞ、俺も支えるから」


「うん……」


 太陽の言葉で上山は見つめ合った。

 もう俺たちは突っ込みもせず、4人で話し始める。


「ところで、弥生はどこかデート行きたいところとかあるの?」


 里内さんが弥生に聞く。


「え、デート?」


「そうよ、来週は長月と二人で行ってきたら?」


「来週って6人で遊ぶんじゃなかったっけ」


「そうだったけど、このままじゃトリプルにならないし。だからまずは2人で行ってきて。私たちはダブルデートしておく」


「そ、そうなんだ……」


 弥生が俺を見た。


「どこか行きたいところはあるか?」


 俺は何も思いつかずに弥生に聞いた。


「そうだなあ……あるって言えばあるかな」


「あるんだ、どこ?」


「これ」


 弥生が『放課後ていぼう日誌』を見せる。


「それって……」


「うん。せっかく芦北が舞台だし、聖地巡礼してみたい」


「なるほど……」


 アニメの舞台を聖地巡礼か。芦北は俺の地元・八代から電車で40分ほどだし、確かに行けないことは無い。


「よし、わかった。計画立てるから行こう」


「うん!」


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