第51話 弥生と光輝
水崎さんは俺に優しい言葉を掛けてくれた。だが、その優しさは神田寿々にも向けられた。
「でも、神田さんもきっとつらかったと思うな」
「そうよねえ、私だったらブチ切れてたわよ。私の好きな人が長月じゃ無くて太陽君で良かったわ」
「お前、ひどいこと言うな」
「だってそうだもん。こんなに幸せになれたからね」
「文佳、あんまり光輝をいじめるな、反省してるんだから」
「はーい、太陽君がそう言うならそうする」
「お前なあ……って、太陽、文佳って呼んでるのか」
「まあな」
「いいでしょ、付き合ってるんだし」
上山が言う。
「まあ、いいけどさ」
「いいなあ……」
水崎さんが言った。
「なに? 弥生も名前で呼ばれたいの?」
上山が言う。
「うん」
「だってさ、長月」
「え?」
「名前で呼んであげてよ」
「俺が水崎さんを!?」
「他に誰が居るのよ。太陽君が呼び出したら私怒るわよ」
「そ、それもそうか……」
「ほら、はやく」
「わ、わかった。弥生……」
「何? 光輝」
「!!」
俺は名前で呼ばれた衝撃で何も言えなくなった。
「光輝、どうしたの?」
「い、いやあ、水崎さんに名前で呼ばれると思ってなくて……」
「何、元に戻ってるのよ、弥生でしょ。言い直し」
上山が言ってくる。
「や、弥生に名前で呼ばれると思ってなくて……」
「だめだった?」
弥生が俺を見る。
「だめなわけないだろ。でも、いいのか、俺たちはまだ……」
「うん。確かにみんなの中で一番遅れてるけどね。でも、呼び方ぐらい追いついてもいいかなと」
「そ、そうだな。わかった、これからは弥生と呼ばせてもらう」
「うん、光輝」
弥生の笑顔がまぶしい。
「お前達にも進展があって良かったよ」
太陽が俺に言った。
「ま、私たちを見習うことね。長月、あんたが素直になればいいのよ」
上山が言う。
「お前、どの口が言ってるんだ」
「う、うるさいわね。私は上手くいったからいいのよ。ほんと、信じられないぐらい」
上山の顔がとろけた。
「お前、幸せそうだな」
「そうね、今はさいっこうに幸せ!」
「だってさ、太陽」
「まあ、俺もだからな。このお姫様には苦労させられたけど、今は最高に幸せだ」
「ほんとにおめでとう」
弥生が言った。
「ありがとう、弥生。がんばってね」
「うん、ありがとう」
あとは俺たちか。ていうか、俺か。頑張るのは。
だが、その前に一仕事あるな。俺は上山に言った。
「ところで……こうなったからには上山に聞きたいことがある。太陽からは聞きにくいだろうからな」
「な、何よ……」
上山が身構えた。
「高校のことだよ。お前、同じ高校になったのは偶然じゃないだろ」
「!!」
上山は顔をこわばらせた。
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