第50話 合流

 合流場所は旧パルコ前のいわゆるパル玉前にした。ここは熊本では有名な待ち合わせ場所。回転する石の玉がある。一度ここで待ち合わせしてみたかったのだ。


 俺と水崎さんはいち早くここについて、太陽と上山を待った。

 その間、パルコに変わって出来た商業施設を2人で見たりしていた。


 やがて、太陽と上山がやってきた。


「待ったか?」

「お待たせ」


 やってきた2人を見てすぐ違和感に気がつく。まず距離が近い。それになにより手を握っている。


「太陽、成功したようだな」


「まあな」


「えっと、文佳。もしかして……」


 水崎さんが聞く。


「報告は後でするから。どこか行きましょう」


「そうね。じゃあ、あのカフェでいいかな」


 俺たちはそこから下通りアーケードを少し歩き、地下にある老舗のカフェに入った。


「じゃあ、報告してもらおうか」


 注文を終えたら、すぐに俺は言った。


「俺と文佳、付き合うことになったから」


 太陽が言った。


「やっぱり! おめでとう!」


 水崎さんが言う。


「ありがとう。これまでいろいろ迷惑掛けたわね。あなたたちのおかげよ」


「おめでとう。ようやくかなったな、太陽」


「なんだよ、前から知ってたのか?」


「そうかなと思った程度だよ。お前は上山をよく見てたからな。可愛いから見てるだけかとも思ってたけど」


「何よ、性格悪いから?」


「そうそう。見るだけなら最高だもんな、上山は」


「うるさいわね、まったく……今日は機嫌がいいから許してあげるけど」


 上山はやっぱり上機嫌だ。


「ま、私たちのことはいいのよ。何か聞きたいことがあるんでしょ」


 上山が言ってきた。


「ああ、さっき寿々と会ったんだ」


「え、そうなの?」


「うん。謝られたよ。だけど、詳しいことは上山に聞いてくれって言われて……悪いけどすぐ聞きたかったんだ」


「そうなのね。寿々が聞いてくれって言ったんなら話してもいいか。あんたがバカだって話」


「なんだよそれ」


「じゃあ、聞くけどなんで寿々が太陽君のこと好きだって思ったの?」


「そりゃ……偶然聞いたんだよ。教室で他の女子と話してるのを。はっきりと好きな人は太陽だと言っていた」


「マジか……そんな感じなかったぞ」


 太陽が驚く。だが、上山が言った。


「そりゃそうよ。それは周りの女子と話し合わせてただけだもん。みんなが太陽君が好きって言ってるのに自分だけ長月とか言えないでしょ」


 それは本当なのだろうか……


「で、あんたはそれを真に受けて寿々に『もう近づくな』って言ったんだって? 寿々がほんとに可愛そう」


 俺は何も言えなくなった。それが本当なら謝るのは寿々じゃなくて俺の方じゃないか。


 俺は思わず立ち上がった。


「待ちなさい! どこ行くのよ」


「寿々に謝ってくる」


「もう謝罪はいらないわよ。寿々は吹っ切れてるから。彼氏も出来たって」


「そ、そうなんだ……」


 俺は再び椅子に座った。確かに、さっき寿々は「さよなら」って言ってたな。俺とはもう会いたくないんだろう。


「私、寿々からこれ聞いて、もう腹が立って腹が立って……」


「あー、それであのとき……」


 太陽が言う。


「はぁ……俺がバカだった……」


 俺は言った。


「だからそう言ったでしょ。だいたい、みんながみんな太陽君を好きになるわけ無いんだから。あんたを好きになる子も居るわよ。わかった?」


「わかったよ……ほんとに反省した」


 俺は下を向いた。


「わかればよろしい。ま、失敗はしたけど、それをこれからに生かせばいいんじゃない?」


「うん、そうだよ。長月君」


 顔を上げると水崎さんが俺を見ていた。


「水崎さん、こんな俺に幻滅したよな……」


「してないから。大丈夫だよ」


「はぁ。やっぱり水崎さんは優しい」


 水崎さんの微笑みがありがたかった。


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