第46話 弥生とデート

「じゃあ、まずアニメショップ行く?」


「そうだな」


 俺たちは通町筋の電停で降りてまずアニメショップに向かった。ここは俺と水崎さんがあのとき出会った場所だが、こうして二人で行くのは初めてだ。


 俺たちはまず書籍、そしてグッズをひたすら見た。水崎さんは男性アイドルアニメのグッズをいくつか購入した。俺は見たことがあるアニメのアクリルスタンドをいくつか購入した。


「やっぱり、眼鏡なんだ」


 俺が購入したキャラクターのアクリルスタンドを見て水崎さんが言う。


「別にいいだろ」


「あ、このキャラ、私に似てるかも」


「き、気のせいだよ。ははは」


 俺の推しキャラクターはどれも今の水崎さんに似ている感じがした。


 だが、水崎さんが買ったキャラクターはどれも俺には似ていない気がする。それ以前に、見た目もバラバラだ。


「なんか、共通点が無いね」


「そうかな。でも、関係性には共通点あるよ」


「そうなの?」


「うん。主人公の親友キャラが多いかな」


「そ、そうなんだ……」


 水崎さんの趣味はそういうことか。それで俺のことを……。


「何か恥ずかしいね……」


「俺も……」


 2人とも恥ずかしくなってアニメショップを出た。


「お昼どうする?」


 水崎さんが俺に聞く。


「うーん、この辺ならお好み焼きとかどうだ?」


 この近くには老舗のお好み焼き店『大文字だいもんじ』がある。噂によるとデートでは定番とも言える店らしい。それを聞いて是非行ってみたいと思っていたのだ。


「あ、あそこか。長月君は行ったことある?」


「いや、俺は無い」


「私はあるから行ってみようか」


 俺たちは二階にあるその店に入った。だが、俺は少し気になることがあった。それは水崎さんがここに来たことがあるという点だ。デートの定番の店に行ったことがある、というのは……。お好み焼きを焼きながら聞いてみた。


「水崎さん、ここ来たことあるんだよね」


「うん、そうだよ」


「……誰とかなあって」


「気になる?」


「まあ……だって、ここってデートの定番の店って聞いたから」


「ああ、そうだね。よく言うよね」


「だから、ちょっと気になるかな」


「そうだなあ、私もデートで来たからなあ」


 水崎さんがそう言ったことで俺も無言になってしまった。元カレと来てたのか。


「ふふ、葉子とだよ。葉子とデートで来たって意味」


「な、なんだ、そうだったのか」


「うん。私、今まで誰とも付き合ったこと無いから」


「そうなの?」


「うん、そうだよ」


「でも、たくさん告白とかされてきたんじゃない?」


「そうだけど、好きになった人も居なかったから断ってきたよ」


「そ、そうか」


「うん。だから今が私の……」


「え?」


「ううん。なんでもない。さ、食べよ」


 俺は安心してアツアツのお好み焼きを食べた。とにかく美味かった。


 俺たちはその後、上通にある本屋『まるぶん』に行くことにした。


「カッパが目印の本屋だよ」


「へぇー」


 俺は八代在住なのでよく知らないが老舗の本屋らしい。


「その本屋の二階はコミックと参考書が充実してるからよく行くんだ」


「そうなんだ。行ってみよう」


 そこに着くと確かに入ってすぐのところにカッパの像があった。それを抜けて店内に入る。一階は普通の本屋という感じか。しかし階段を上って二階に上ると確かにコミックと参考書だけのフロアがあった。まさに俺たち向けの場所だな。


「私も久しぶりだからちゃんと見ようかな」


 水崎さんはコミックのコーナーをじっくり見ていく。


「『放課後ていぼう日誌』も全巻揃ってるね」


「ほんとだな」


「アニメは見てるけど私も読もうかな」


「俺のを今度貸そうか?」


「いいの?」


「もちろん。じゃあ少しずつ持ってくるから」


 俺は水崎さんに『放課後ていぼう日誌』を貸す約束をした。


 さらに水崎さんは参考書のコーナーをいろいろと見ていく。俺はまだコミックのところを何か面白いものは無いかを探していた。


 すると、俺は突然声を掛けられた。


「……長月君?」


「え、寿々!?」


 俺のトラウマとも言える神田寿々かんだすずが目の前に居た。


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