第44話 生徒会長
翌日の昼休み。いつもように6人で……とはならず今日は5人だ。
「あれ、太陽君は?」
里内が聞く。
「今日はなにやら生徒会室でランチミーティングがあるらしい」
俺は言った。生徒会長・
「そうなんだ、文佳残念だったね」
里内が言う。
「まあいいわよ。ずっと推しのそばに居るのも疲れるし」
「ほんと、素直じゃ無いわね」
「だから素直だって」
そういう上山だが、表情は少し暗かった。
だが、俺たちが食べ終わる頃に太陽は教室に戻ってきた。
「あれ? 早かったな」
「ああ、食べたらすぐ帰ってきた」
「だって、ランチミーティングだろ。いろいろ話すことあったんじゃないか?」
「それが……行ったら2人だったんだよ」
「2人? 生徒会長とお前だけか?」
「ああ。だから、弁当食べたらすぐ逃げ帰ってきた」
「なるほどな」
「あの
上山が怒っている。
「ほんとね。2人で食事したかっただけじゃない」
「太陽君と2人で食事なんて許されることじゃないわ」
上山は怒りの最高潮に達しているようだ。
「お前だって太陽と2人で食事してただろ」
「食事じゃないわよ。飲み物飲んでただけだし」
「同じだろ」
そのとき、教室がざわついた。ふと見ると生徒会長・
「太陽君!」
生徒会長が太陽に話しかける。
「なんでしょう」
「少し話し合いたいことがあるのだが、生徒会室に来てくれないか」
「えーと……」
太陽は困っているようだ。
「太陽君に何の用?」
そこで上山が立ち上がり、口をはさんできた。
「あなた、誰?」
生徒会長が上山に言う。
「私は上山文佳。太陽君とは中学の頃からの友達よ」
「ふーん……でも彼女じゃ無いんでしょ」
「彼女じゃないけど……」
「けど何よ」
「一番親しい女性と言ってもいいんじゃないかしら」
その言葉に生徒会長が一瞬ひるんだ。
「太陽君、ほんと?」
「まあ、そうですね、はい」
太陽がそれを認めた。
「そ、そんな人が居たんだ……」
生徒会長はショックを受けているようだった。
「で、でも……太陽君は上山さんのこと、どう思ってるの?」
生徒会長は聞いた。
「そうですね……一番大事な女性ですかね」
太陽は言った。
「そ、そんな……わかったわ。今日はもういいわ」
生徒会長は教室を出て行った。
「はあ……助かったよ、上山さん」
「いいわよ。私はただ、あいつを追い払いたかっただけよ」
「そうか」
「でも、何よさっきの。『一番大事な女性』って。いくら追い払うためとはいえ、あれじゃ恋人みたいじゃない」
「そうだが、嘘じゃ無いぞ。今の俺にとって、一番大事な女性だ」
そう言って、太陽は上山を見た。
「か、からかわないでよ。まったく……」
「いや、何しろみんなの前で言ってしまったからな……まあ、そういうことだ」
「そ、そんなこと……」
「今度の日曜。デートしてくれないか。話したいことがある」
「そ、それって……」
太陽は頷いた。
「……わ、わかったわ。今度で全て聞かせてもらうから」
「うん」
どうやら、太陽も上山も正念場のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます