第43話 昼休み
翌日の昼休み。俺たちはまた6人で集まっている。
「そういえば、昨日の女子会はどうだったんだ?」
俺は聞いてみた。
「じょ、女子会なんだから内容聞かないでよ」
上山が動揺したように言う。何かあったかな。
「とりあえず決まったことは2つあるけどね」
里内さんが言った。
「決まったこと?」
「うん。一つは弥生と長月君のデートの日付を決めること」
「え!?」
確かに水崎さんは俺と二人で会おうと言っていたが、その日付は決まっていなかった。
「なんで俺の話になってるんだ」
てっきり、女子会では上山と太陽の話をしていると思って聞いてみたのに、やぶ蛇だったか。
「もう一つは、太陽君にお願いすることかな」
「ちょっと、葉子。それ以上言ったら怒るよ」
上山が里内さんに言った。が、太陽はそれに構わず聞いてきた。
「何か俺に頼みたいことがあるのか? 遠慮せず言ってくれ」
「ちょっと……」
「いいだろ」
太陽が上山に言う。
「う、うん……」
上山が黙った。
「じゃあ言うけど、文佳をデートに誘ってくれないかな」
里内さんは言った。
「え!?」
太陽は驚いている。
「そんなのダメに決まってるでしょ。太陽君を困らせないでよ。だから言ったのよ」
上山は言った。
「いや、俺は上山さんが来てくれるなら誘いたいけど。いいのか?」
太陽が言う。
「嫌よ」
「文佳!」
上山の拒否に里内さんが大声を出した。
「何よ」
「どうしてそんなに素直にならないの?」
「なってるわよ。だって、太陽君とずっと2人でいたら、私が勘違いしてしまうもの。その後がすごく悲しくなるわ」
「悲しくなるなよ」
「なるわよ。私にとって太陽君は『推し』なんだもの。遠くから見るのがちょうどいいのよ」
「お前なあ……」
太陽もこれには困っているようだ。
「俺のことを『推し』と言ってくれるのは嬉しいけど、一人の男としてみてくれないかな」
太陽が上山に言った。上山は困った顔をしている。
「だ、だめよ。太陽君は普通の男じゃないもの。『推し』よ」
「『推し』の前に普通の男だろ。まったく……」
太陽も打つ手なしか。
「私はいいから。長月と弥生のデート日程は決まったの?」
「俺はいつでもいいけど……今度の日曜は……あ、6人で遊ぶって約束してたか」
そうだった。里内さんが6人で遊びたいと言ったんだった。
「あ、いいよ。それはまた今度にして。2人でデートしてきて」
里内さんが言う。
「いいのか?」
「うん。じゃあ、今度の日曜はそれぞれのカップルに別れて楽しもう!」
「うん、わかった」
水崎さんが笑顔で言った。
「ちょ、ちょっと。私たちはデートしないからね」
上山が言う。
「ふーん、そうなんだ」
里内さんが言う。
「そうよ」
「まだ週末まで時間あるから、その辺の判断は本人に任せるから」
「なによ、絶対行かないからね!」
そういう上山さんを太陽は困った顔で見ていた。
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