第42話 女子会続き(side 弥生)

「それで、弥生はどうなのよ」


 文佳は自分の話は終わったとばかりに話を振ってきた。


「私?」


「そう。私が太陽君と二人で居たとき、弥生は長月と2人で居たんだから」


「確かに。弥生、どんな雰囲気だったの?」


 葉子も聞いてくる。


「私は……」


 でも、長月君が推しのアニメの缶バッジを買ってくれたとは言いにくい。オタク趣味は彼女たちには隠していた。


「どこ行ったの?」


「2階のカフェ」


「へぇー、いい雰囲気になった?」


「う、うん……なったかな」


 2人で缶バッジの中身が何だったかを確認していただけだけど。


「そうなんだ」


「少しね。でも、とりあえず誤解はしっかり解けたから」


「そっか。それは大きいよね」


 葉子が言う。


「あいつ、みんなが太陽君好きになると思ってるから。ほんとバカよね」


「でも、そう言う文佳も言ってたような……」


「わ、わたしは比喩表現で言っただけよ。みんなって言ってもほんとにみんななわけないでしょ」


 文佳は言い訳した。


「ま、弥生は最初から長月君だし、ちょっと変わってるのは確かだけどね」


 葉子が言う。


「そうかな。最初に助けてもらったとき、長月君はヒーローみたいでかっこよかったよ」


「私はそれを太陽君に感じたんだけど。それを長月君に感じるのが弥生だよね」


「もう、いいでしょ。私が好きになったんだから」


「うんうん。いいよ。で、どうなの? 付き合えそう?」


「うーん、どうだろ。よくわかんないなあ……」


 私はため息をついた。


「長月のくせに生意気ねえ。弥生が好きって言ったら普通すぐ落ちるでしょ」


 文佳が言う。


「す、好きとは言ってないから……」


「そうだっけ?」


「うん。太陽君を狙ってないって言っただけ」


「あ、そうか。イコール長月が好きってはならないか」


「うん。気がついてもらってないかも」


「あー、そりゃそうかもね。あいつ、鈍いし」


「うん……あ、でも今度2人で会おうって言ったんだ」


 帰り際に、またあの格好で会おうと言った。


「お、弥生にしては攻めるね」


「うん。だからそのときには頑張りたい」


「で、いつ会うの?」


 葉子の言葉に動揺した。


「えっと……まだ、決めてない……」


「はあ? じゃあ、まずそれを決めないと」


「そ、そうだね……まずそこからか」


 そこまで話したところで文佳がため息をついた。


「どうしたの?」


「いや、弥生は長月と二人で会うんだなあって思ったら。昨日は、私と太陽君もそうだったのに。でも、もう二度とそんなときは来ないなあって思って」


「そんなことないでしょ。文佳も誘ったら?」


「!! 私が推しにそんなこと出来るわけ無いでしょ」


 葉子の言葉に文佳が反論する。


「なんでよ。弥生と立場は同じじゃん」


「全然違うわよ。私にとって太陽君は遠い存在だもん」


「そうかなあ。私たちより文佳たちの方がいい雰囲気になってると思うけど」


 私は言った。


「そ、そんなことないわよ」


「うーん、これじゃデートは太陽君から誘ってもらうしかないかもね」


 葉子が言った。確かにそうかも。

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