第41話 女子会(side 弥生)

「で、何の話よ」


 文佳が言う。放課後、私・水崎弥生と里内葉子、それに上山文佳の3人でいつものカフェに来ていた。葉子が何か話があるらしい。


「そりゃ、文佳のことよ」


「何なのよ」


「もうちょっと素直になったら?」


「な、何よ。私は素直よ」


「だって、太陽君のこと好きなんでしょ?」


「うん。好きよ。でも、それは推しとしてであって付き合うとかじゃないから」


 文佳がいつも言っていることを言う。


「でも、付き合えたら嬉しいでしょ」


「嬉しいけど、そんなの無理だから」


「無理かどうかはやってみないと分かんないじゃ無い」


「無理よ。私なんて……」


「だって、昨日いい雰囲気になったんでしょ」


「そんなの、ファンサービスよ」


「太陽君がそういうことするかなあ」


「するわよ。あいつはモテモテなんだから」


「だからって、いろんな女子にそういうアプローチする人には見えないけどなあ。私達と遊んだときも全然そんな感じなかったし。ね、弥生?」


 葉子が急に私に聞いてきた。


「うん。少なくとも私はそう感じなかったな」


「そ、そうなんだ……」


 文佳が少し動揺したように言った。


「文佳が特別なんじゃないかなあって思って」


 葉子が言う。


「そ、そんなわけないでしょ! 中学の時、一言も話しかけてこなかったし……」


「太陽君って意外にシャイな面あるからなあ。ほんとに好きな子には話しかけられなかったとか」


「あいつがそんな感じには見えないけど……」


 文佳の声が小さくなっていく。


「私が太陽君に聞いてあげてもいいけど。文佳のことどう思ってるのか」


「やめてよ!」


 文佳が葉子の提案を大きな声で拒否した。


「やめてよ……何も思ってないと言われたら立ち直れない……」


「あれ? あきらめてるんならどう思われてもいいんじゃないの?」


「そうだけど……少しは夢見たいのよ。あいつに彼女出来るぐらいまでは。いいでしょ」


「はぁ。ほんとにこじらせてるねえ、文佳は……」


 葉子があきれた感じで言う。


「あんたみたいにいい子じゃないからね」


 文佳が葉子に言った。確かに葉子は自分の感情にストレートで動く子だ。


「そりゃどうも。でも私は文佳の性格も嫌いじゃないけどね」


「うん、私も。何か可愛い」


 私はつい言ってしまう。


「な、何よ! 2人して。馬鹿にしてるでしょ」


「してないしてない。でも、ほんとだよ。太陽君が好きになるのも分かるかな」


「ちょっと、何言ってるのよ。太陽君が私を好きになるわけ無いでしょ」


 文佳はそう言ってコーヒーを飲んだ。


「うーん、私では無理っぽいなあ。あとは太陽君に任せるしかないか」


 葉子はそう言って私を見た。


「うん。太陽君はきっと文佳をわかってやれると思う」


「そうだね」


「ちょっと、何いい感じでまとめに入ってるのよ」


 文佳が言った。それに葉子が言う。


「私から言いたいことはこれだけ。たぶん、太陽君は文佳が好き。だから、文佳が素直になればすぐにでも付き合えると思う。以上!」


「そ、そんなことないから……」


「でも、私も同意見かな。この間、4人で出かけてそう思ったよ」


 私は文佳に言った。


「2人ともひとごとだと思って……。まあ、いいわ。ご意見ありがとう。参考にはしないけどね」


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