第40話 報告
「それで、どうだったの?」
月曜の昼休み。里内さんが俺たちに聞いてくる。日曜に4人で出かけて何があったかを聞きたいらしい。
だが、俺たち4人は誰も何も返答しようとしなかった。
「え、なんで黙ってるの? もしかして、喧嘩した?」
「なんでだよ。喧嘩はしてないぞ。むしろ、より仲良くはなれたかな」
太陽が答える。
「そうなんだ。少し、弥生から聞いては居るけどね」
そういって、里内さんは俺を見た。
「な、なんだよ」
「誤解が解けたんだって?」
「……聞いたのかよ。そうだよ、誤解してたよ」
「え? 何を?」
井端が聞いてくる。
「……言えるかよ」
「じゃあ、あとで葉子に聞くか」
そうだった。付き合ってるんだしすぐ聞けるか。あとで聞かれて何言われるかが恐い。
「わかったよ、言うから……だから、水崎さんが太陽を好きだと思ってたんだよ」
「あー、それか」
井端は言った。
「え、お前、気がついてたのか」
「そりゃあね。少なくともそれは無いってちょっと前から思ってたぞ」
「マジかよ。教えてくれよ」
「いや、お前も分かってると思ってたから」
「なんでだよ。わかってねーよ」
「ま、あんたは鈍いからね」
上山が口を挟む。
「その鈍さは罪よ。自覚しなさい」
「うるせーな、お前に言われたくない」
「なによ」
「ちょ、ちょっと……私はいいから。喧嘩しないで」
水崎さんが俺たちをなだめた。さすがだ。優しい。俺たちは黙った。
「で、長月はどうだったの?」
里内さんが俺に聞いてくる。
「何が?」
「弥生の私服。なんか、気に入ってる格好してもらったんでしょ」
「え、そうなんだ。いいなあ」
井端が言う。
「何? 厚師も私にしてもらいたい格好とかあるの?」
「そりゃあるよ」
「へぇー、そうなんだ。じゃあ、後で聞かせて」
「お前ら、すぐイチャイチャするな。まったく」
俺はあきれて言った。
「ごめん、ごめん。で、どうだったの? 弥生の私服」
「そりゃ……可愛かったよ」
「へぇー!」
里内さんが高い声で言う。水崎さんは顔が赤くなっていた。
「長月がそんなこと言うなんてすごい効果ねえ。どんな服なんだろ」
「まあ、俺のことはいいだろ。それより、太陽と上山のこと聞けよ」
俺は矛先をそらした。
「え? 文佳と太陽君、進展あったの?」
「無いわよ。何言ってるのよ。私はファンサービスしてもらっただけ」
上山がいつものように言う。
「ファンサービス?」
「そう。一時間だけ2人になったのよ」
「へぇー、推しと2人きりか。どうだったの?」
「そりゃ、夢のようだったわよ。まるでカップルみたいで」
上山がとろけた顔になった。
「ありゃりゃ、文佳もそんな顔するんだ」
そう里内さんに言われて上山の顔が元に戻った。
「ま、でも、一時間だけのシンデレラよ」
あー、カボチャの馬車ってそういうことか。
「じゃあ、いい雰囲気だったんだ」
里内さんが太陽に聞いた。
「ま、そうかもな」
「ヒュー! 文佳やったじゃん」
「まあね。いい夢見させてもらったわ」
「いや、夢じゃなくてさ。現実だから」
「違うわよ。夢よ。現実には何でもないんだから」
「そんなことないでしょ。太陽君ってそんな人じゃ無いと思うけどな」
里内さんがそう言って太陽を見た。
「そうなんだけど、なかなか上山が信じてくれなくて」
「ああ、そういうことか……。なるほどねえ。じゃあ、今日は女子会かな」
「え?」
上山が里内さんを見た。
「放課後。3人で集まろうか」
「なんでよ。あんたは井端君と帰るんでしょ」
「厚師、今日はごめんね」
「いいよ、俺は」
「うん、ありがと。じゃあ、そういうことで。弥生もいいよね?」
「う、うん。いいよ」
ということで、今日は女子三人が何か集まるようだ。
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