第39話 合流

 コーヒーショップでいろいろ話したことで俺と水崎さんは以前よりかなり打ち解けたように思えた。

 だが、時間はあっという間に過ぎ、気がついたら太陽たちと合流する時間が過ぎていた。


 俺たちは急いで店を出て、太陽と上山が居る地下のフードコートに向かった。


「悪い、少し遅くなった」


「あら。もうちょっと、ゆっくりしてればよかったのに……」


 上山が俺たちを見て言う。太陽はなぜか何も言わない。上山の話し方も何かいつもと違う。


「なんだ? お前達ちょっと雰囲気変わったな」


「え? そんなことないわよ……ね?」


 上山が太陽を見つめる。太陽は照れたように目をそらした。上山の目も何かとろんとしてるし。


「もしかして、付き合いだした?」


「なんでよ。私が太陽君と付き合えるわけ無いでしょ」


 俺の言葉に上山が怒る。いつの間にか表情も元に戻っていた。


「ま、いいわ。そろそろカボチャの馬車に乗る時間か」


「馬車? 乗るのは古い路面電車だろ」


「うるさいわね。私にはガラスの靴が無いんだから、カボチャの馬車ぐらい乗せてよ」


「文佳、何の話してるの?」


 水崎さんが聞く。


「な、なんでもないわ……はぁ。魔法が解けちゃった。帰ろうか」


「そうだな」


 太陽が言う。俺たちは路面電車の停留所まで歩いた。水崎さんとはここでお別れだ。


「それじゃ、また明日ね」


「うん、またな」


「長月君!」


 水崎さんがまた俺の耳に小声でつぶやく。


(今度はこの格好で2人で会おうね)


「お、おう……」


「じゃあね!」


 水崎さんは上熊本行きの電車に乗っていった。


 俺たちは熊本駅行きの電車に乗る。

 いつもなら何か話している太陽と上山が何も話さない。無言のまま、熊本駅に到着した。


「……私はちょっと駅ビルに用事があるから。先に帰ってて」


 上山が俺たちに言う。


「じゃあ、俺も行く」


 太陽が言った。


「な、なんで来るのよ。私はちょっと一人になりたいんだから。付いてこないで」


 上山が言った。


「……わかったよ。じゃあ、また明日な」


「う、うん。また、明日ね。太陽君……」


 二人は見つめ合っている。


「えーと、一応、俺も居るんだけどな」


「あ! えーと……長月もまた明日ね」


「ついで感がすごいんだが」


「いいでしょ! あんたには弥生が居るんだから」


「なんでだよ。水崎さんとはそんなんじゃないぞ」


「はいはい。私も太陽君とそんなんじゃないのよ」


「そうかい、そうかい」


 俺と上山はにらみ合った。


「お前ら、ほんとに……。まあ、いいか。帰るぞ」


 太陽が俺に言った。


「だな、帰るか」


 俺と太陽は二人でJRに乗って帰った。


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