第37話 アニメショップ
三階をしばらく進むと小さなアニメショップがあった。
「あっ」
水崎さんが何かを見つけ、中に入っていく。俺も一緒に入った。
「これって……」
男性アイドルアニメの缶バッジだ。見本が何種類か置いてある。実際には袋に入っていて何が当たるか分からないやつだ。
「何? 弥生、そういうのに興味あったの?」
上山が入ってくる。
「ち、違うの。見たことあるなあって。あ、これもあるなあ」
そう言って、ごまかすように他の有名アニメのところを見だした。
「ああ、これね。これなら知ってる。へえ、こんなグッズあるんだ」
上山も一緒になってそれを見始めた。太陽は入り口近くで興味なさそうに見ている。
俺は気づかれないように水崎さんが最初に興味を持っていた缶バッジの袋をいくつか取り、さらには俺が好きなアニメの缶バッジも何枚か取った。
「俺、ちょっと買ってくるわ」
そう言って会計に行く。そして、お金を払い店を出た。あとで水崎さんに缶バッジを渡すか。
その後も四人で洋服に雑貨に、いろいろな店を見た。
途中でいくつか買い物をして、俺たちは一階まで降りてきた。
「じゃあ、これからどうする? 休憩する?」
上山が言う。うーむ、これだと、なかなか缶バッジが渡せないな。2人きりになる必要がある。
「ちょっと提案があるんだけどいいか」
俺は言った。
「何よ」
「ペアで別行動しないか」
「え?」
水崎さんが驚いている。
「へぇ……言うようになったわね、あんたも」
上山が俺を見た。
「なんだよ」
「いいわよ。じゃあ、ペアで行動してちょっと何か食べましょ。一時間後でいいかしら」
「よし、わかった」
「じゃあね」
上山が太陽の腕を取って地下に降りていった。
「俺たちはどこに行こうか?」
水崎さんに聞いてみる。
「そうね、ちょっと休むなら二階にカフェがあるよ」
「そうか、じゃあそこに行こう」
俺と水崎さんは二階に上がった。
入り口でまずコーヒーを頼む。俺はコーヒー。水崎さんはモカコーヒーを注文し、席に座った。
「疲れたか?」
「ううん、大丈夫」
「そうか」
「でも驚いたよ。長月君がペアで別行動を提案するなんて……」
「ちょっと理由があってな」
俺は缶バッジの袋を出した。
「あ、これって……」
「うん。さっき俺のと一緒に買ったんだ」
「そうだったんだ」
「うん。誤解して迷惑掛けたお礼には足りないかもしれないけど受け取ってくれ」
「ありがとう。嬉しい! こういうランダムなやつは何が出るか分からないのが楽しいんだよね」
「欲しいのがあるかどうか、開けてみたら?」
「そうね。でも、確率は高くないよ」
そう言って、水崎さんは袋を開けだした。
「お、これか……次は……これね。うん……」
水崎さんはどんどん開けていく。だが、どうもお目当てのものは出てないっぽい。
「これが最後か」
俺も緊張してきた。是非出て欲しい。開けて出たものは……
「あ、やった! 推しが出たよ!」
「おー! やったな!」
俺と水崎さんは盛り上がった。
「で、どういうキャラが推しなんだ?」
「うーん、内緒」
そう言って水崎さんは缶バッジを俺には見せてくれなかった。
気になるな。
「あ、長月君も買ったんでしょ。開けようよ」
「そ、そうだな」
俺は自分が買った物を開けだした。俺はこのアニメの推しキャラは決まっている。
「あ、出た!」
俺は推しキャラが出て嬉しくなり、思わず見せてしまう。
「そのキャラが長月君の推し?」
「まあな」
「やっぱり眼鏡なんだ」
「いいだろ、別に……」
眼鏡の子の前で眼鏡の推しキャラがバレるのは少し恥ずかしかった。
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