第33話 4人で待ち合わせ
そして日曜日になり、俺と太陽は熊本駅まで来てそこから路面電車に乗る。今日の待ち合わせ場所は路面電車で少し行ったところにあるサクラマチ・バスセンターだ。もちろん、上山も同じ電車で八代から来ていいはずなので、誘ったのだが「一緒は嫌よ」と断られてしまった。だが、結局、路面電車で一緒になって、俺たちは3人でサクラマチに向かった。
水崎さんとはロビーで待ち合わせしている。しばらく待つとその声が聞こえてきた。
「お待たせ!」
「いや、待ってないから大丈夫だよ」
やはりあのときの水崎さんの格好だ。眼鏡にベレー帽。そしてロングスカート。実に可愛らしい。俺は見とれてしまった。
「えっと、誰?」
上山が言う。
「だから、引かないでって言ったでしょ」
「ごめんごめん。すごく雰囲気変わるわね。クラスのアイドルから何というか……」
「俺はいいと思うぞ。そして、光輝はメロメロっぽいな」
太陽が言う。
「言うなよ……水崎さん、相変わらず、すごく似合ってるな」
「あ、ありがと」
「なるほどねえ。長月の好みはこんな感じか。確かにどことなく……」
「何だよ」
上山は
「いや、眼鏡が同じだなあって」
「同じ?」
「あ、なんでもない」
上山がごまかす。
「お前、ふざけるなよ」
俺が上山をにらんだ。
「ごめん、ごめん。そんな怒んないでよ。私も眼鏡掛けてきてあげるから」
「眼鏡掛ければいいってもんじゃないんだよ」
「はいはい、すみません。私みたいな子じゃ無理だよね。大人しい感じの子がいいんだもんね」
「お前、マジで……」
「上山さん、あんまり光輝をいじめないでくれ」
「い、いじめてないから。ハハハ」
太陽が上山を止めてくれた。
「悪かったわよ。今日は長月は弥生とペアね。私は太陽君とペアということで」
上山が太陽の手を握った。あいつ、今日は積極的だな。
「弥生、聞いてた?」
「あ、うん。聞いてるよ。長月君とペアだよね」
「そうよ。で、これ」
握った手を見せて言う。
「あ、そうだね」
水崎さんが俺の手を握る。
「え?」
「いいでしょ。今日ぐらい」
上山が俺に言う。いや、握っているのは水崎さんなんだけどな。
「いいかな?」
水崎さんが俺に聞く。
「お、俺はいいけど。いいのか? 太陽の前で俺の手を握って」
「だから……もう、長月君は勘違いしてるよ」
そして、口に手を当て俺の耳に何かつぶやこうとする。背伸びしているのがかわいい。俺は少しかがんだ。水崎さんが小声でつぶやく。
(私は太陽君狙いじゃ無いよ)
「え?」
俺はまじまじと水崎さんを見つめた。水崎さんは微笑んでいた。
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