第32話 女子3人(side 弥生)
その日の放課後、私・水崎弥生と里内葉子、それに上山文佳の3人でまたカフェに来ていた。葉子はこの後、井端君とデートらしいのであまり時間は無いのだが、葉子がどうしても文佳に確認したいらしい。
「で、なんの話?」
「文佳、今日どうしたの? 長月君にやたら怒ってなかった?」
葉子が聞く。
「あー、それか。ごめん……」
文佳は私たちに謝った。
「言えないことなの? 長月君と何かあったんでしょ」
「違うから。長月とは何も無い。これは本当」
「じゃあ、どうして――」
「実は中学の時の友達に会ってね」
「うん」
「その子、長月といい感じだったらしいんだ」
「え!?」
私は思わず言ってしまう。
「でも、太陽君が好きだって誤解されちゃって、『もう俺に近づくな』って言われたって……」
「そんなことがあったんだ……」
そういえば、長月君がそんなことがあったと話していた記憶がある。
「うん。でも、それ誤解なのよ。その子は本当に長月が好きだったの。だから私、長月に腹立っちゃって……こんな態度取っちゃった。ごめん……」
「そういうことかあ。何かあったかって思って心配したじゃん」
葉子が言う。
「ごめん、ごめん」
「でも、長月君、そんなことがあったんだね」
私が言った。
「うん。だから、長月は今も周りの女子はみんな太陽君が好きだって思いこみ続けてるんだと思う」
「そっか。私も誤解されてるし……」
「だよね。あいつほんとにバカだから」
「……でも、私の好きな人がバカバカ言われると――」
私は思わず言ってしまう。
「あ、ごめん……」
「あんまり言わないようにしてね」
「わかった、今日はごめんね。出来るだけ言わないようにするから」
出来るだけなんだ……
「でもやっぱり中学の時も長月君を好きな子いたんだ。高校でも油断できないよ」
葉子が私に言う。
「え?」
「ライバル。出てくるかもしれないって事」
「そ、そっか……」
「うん。急いだ方がいいかもね」
「そうだね。だから、今度のお出かけでは気合い入れていく。長月君が気に入った格好で行くから。文佳、引かないでね」
「え? 引かないわよ。なに、そんなすごい格好なの? コスプレとか?」
「そういうんじゃないけど。逆に地味になるって言うか……」
「え、地味子ファッション?」
「まあそういう感じ」
「へぇ-、弥生のそういうの見たこと無いなあ」
葉子が言う。
「長月そういうの好きなんだ。まあ、寿々もそっち系か」
「すず?」
「ああ、気にしないで。こっちの話。私は引かないから大丈夫よ」
「うん。今度は私、頑張るから!」
「気合い入ってるねえ」
葉子が言う。
「うん。葉子に負けてられないし……私も彼氏作る」
「うん。ダブルデートしよ。あ、トリプルか」
そう言って、葉子は文佳を見た。
「なんでよ。私は彼氏作る予定ないから」
文佳が言う。
「またまた。太陽君といい感じじゃなかった?」
葉子が言う。私もそう思った。
「そんなことないから。私は『推し』にまた思い出作ってもらうだけ。それだけでいいのよ」
「そうかなあ。結構脈あるような気がしてるんだけど」
「どこがよ。私なんて眼中に無いわよ」
「うーん……まあ、次のお出かけでどうなったか、弥生の報告を待つか」
「うん。文佳と太陽君がどんな感じだったか、報告するね」
「どうせ脈は無いのよ。その日だけ楽しませてもらう、それだけだから」
文佳はそう言っているが、脈あると思うんだよなあ。
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