第28話 報告

 ゴールデンウィークが明けて、お昼休みにはいつも通り俺たち6人が集まり、いつも通りの昼食タイムが始まると思っていた。


 だが、6人が集まったとき、急に里内さんと井端が立ち上がり2人並んだ。


「えっと、みんなに報告があるんだけど……」


 井端が言う。


「俺たち付き合うことになったから」


「え?」


 俺は思わず言ってしまった。


「そうか、おめでとう!」

「おめでとう、葉子、井端君」

「おめでとう、よかったわね」


 他の三人は祝福の言葉をかける。


「お、おめでとう。しかし、驚いたな……」


「そう? バレバレかなと思ってたけど」


 里内さんが言う。


「まあ、そうだけど。付き合うってなったから……あのあと告白でもしたのか?」


「うん。私からしたんだ」


 里内さんが言う。


「そ、そうか」


「あ、それで長月君に相談なんだけど……」


「なんだ?」


「席、代わってくれない」


「え?」


 いつも昼休みには男性陣が井端、俺、太陽の順に座っている。だから、俺と席を替わって井端の隣に行きたいって事か。


「おお、いいぞ」


 俺は立ち上がった。女性陣はいつも上山、水崎さん、里内さんの順に座っている。里内さんと席を替わるって事は俺は水崎さんの隣、太陽の前って事か。


「ごめんね」


 里内さんは俺の席に座った。俺は水崎さんの隣に座る。


「よろしくね」


 水崎さんが俺に言った。


「……そうだな。よろしく」


 俺は少し動揺しながら言った。


「それにしても井端君と葉子が付き合いだすなんてね。最初の頃を思い出すと考えられないわね」


 上山が言った。


「う、うん……あはは」


 里内さんは笑う。だが、そのあとに井端が言った。


「まあ、そうだよな。でも、実はずっと好きだったんだ」


「え?」


 里内さんが驚いて井端を見た。


「俺が付き合ったり狙ったりした相手。全員、葉子に似てるだろ。そういうことだよ」


 こいつ、そんなに前から里内さんのことが好きだったのか。


「だったら、なんで早く言わないのよ」


 里内さんが井端に言う。


「お前、人気者だからさ。近づく方法も無かったし。あきらめてたんだよ。だから、似た人を狙ってた。最低だろ、俺」


 井端が自嘲気味に言う。


「あらら、井端君。見かけによらず一途だったのね」


 上山が言う。


「一途なのかね……葉子の代わりを探して、結局見つからなかった。でも、こうやって本人と付き合えるなんて、ほんとラッキーだと思ってるよ」


「そうだったんだ……。ごめんね、私が振り向くの遅くなって」


「いや、こんなに幸せなことは無いよ」


 2人は見つめだした。


「ゴホン」


 上山がわざとらしく咳をしたので、2人は慌てて顔をそらした。


「それにしても、井端君は一途だけど、葉子は真逆ね。全然違う人を好きになってない?」


 上山が意地悪く言う。


「文佳、なんてこと言うのよ……でも、確かにそうかも。前の彼はちょい悪系で、次は太陽君でしょ。で、厚師あつしだもんね。全然タイプ違うわ」


 里内さんが言った。

 厚師って井端か。いつの間にか名前で呼んでるし。


「ちょ、ちょっと待て。里内さん、俺のこと好きだったの?」


 太陽が慌てて言う。


「あ、言っちゃった。うん、そうだったよ。でも、今は厚師だから」


「そ、そうなんだ……」


「ふふ、残念?」


「あ、いや……」


「わかってるって。一緒に遊んだときも全然手応え無かったし。私なんか眼中に無かったでしょ」


「そういうわけじゃ……」


「いいよ。今は厚師が私の世界で一番好きな人だし」


 そう言って井端を見る。


「まあ、俺は葉子の過去は気にしてない。今が大事だからな」


 井端はそう言って葉子を見た。


「まーた、二人の世界入って」


 上山が文句を言った。


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