第23話 6人でボウリング

 その後、俺たちは少し歩いていろんな遊戯施設があるところに移動した。俺たちの目当てはまずボウリングだ。


「ペアで対戦しようか」


 里内が言う。


「そうだな。じゃあ、どうペア分けする?」


 俺が聞くと里内が不思議な顔をした。


「え、今日ずっとペアで居るからそのままでいいんじゃない?」


 マジか。確かに井端と里内さん、太陽と上山、俺と水崎さんで行動しているが、水崎さんは太陽と行動したいはず。でも、今日はずっと上山に取られている。これでは不公平だ。


「えーと、上山。ボウリングぐらい水崎さんと代わったらどうだ?」


 俺は聞いてみた。


「は? 嫌よ」


 なんてやつだ。まあ、こいつはそういうやつだよな。


「お前なあ……」


「じゃあ、弥生に聞いてみたら?」


「そうだな。水崎さんはどっちがいい?」


「私はこのままでいいかな」


 そりゃそう言うか。この雰囲気で代わって欲しいと言える水崎さんじゃない。


「じゃ、じゃあ、ジャンケンか何かで決めるか。ランダムでもいいだろ」


「私はあんたとなんて組みたくないから無理」


 上山が言う。こいつ、マジで……


「長月君」


 水崎さんが俺に言ってきた。


「ん? 何?」


「私とじゃ嫌かな……」


 水崎さんが少し下を向いて言う。やばい。


「そういうわけじゃなくて……」


「じゃあ、私と組んでくれるかな?」


 水崎さんの決心は固そうだ。今日はもう上山に譲ると決めているんだろう。だったら仕方ないか。


「わかったよ。じゃあ、俺と組もう」


「うん!」


 水崎さんは笑顔で俺を見た。はあ。これは勘違いしてしまいそうになる。

 だが、水崎さんが本当に好きなのは太陽なのだ。俺は二度と勘違いはしない。


「よし。それじゃペアの中で最下位が他のチームにジュースおごることにしようぜ」


 井端が言い出す。


「望むところだ」


 太陽が受けて立つ。こいつはスポーツは万能だからな。負けるはずが無いと思っているんだろう。


「俺もいいぜ、やるか」


 俺もボウリングは苦手じゃ無い。当然、受けて立つ。まあ、井端には勝つだろう。


 ボウリングが始まると、やっぱり太陽は上手かった。ストライク連発。200を超えるスコアだ。

 俺も悪くは無い。180越えで井端には20点差を付けた。


 しかし、女性陣は大きく差があった。里内さんが105点、上山が90点だったのに対し、水崎さんは65点。序盤のガーター連発が響いてしまった。


「というわけで、長月君と弥生ペア、ジュースお願いね!」


「わかったよ」


 俺たちは彼らが飲みたいものを聞いて、自販機に向かった。


「ごめんね、長月君」


「ペアなんだから俺の責任でもある。俺がもうちょっと取れればなあ。最後失敗したし……」


「私、運動苦手なんだ。インドア派だし。長月君は知ってるか……」


 思わずあの時の水崎さんの姿を思い浮かべる。


「あのときは可愛かったな……」


「え?」


「あ、ごめん、口に出てた」


「ふふ。長月君、あのときの私、気に入ってたもんね。ごめんね、今日はこういう格好で……」


「いや、今日も可愛いから」


「え?」


「今日だって可愛いよ。あのときとは違う可愛さがあるからさ」


 あのときは可愛かったけど、今は可愛くない、みたいな感じになってしまい、思わず言ってしまう。


「そ、そう……」


 水崎さんが照れていた。


「さ、早く買っていこう」


「うん!」


 俺たちは慌てて自販機で飲み物を買った。


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