第21話 6人で待ち合わせ

 そして日曜日。俺と太陽は熊本駅に来ていた。朝からため息ばかりの俺を太陽は心配していたが、こればかりは相談できない。俺たちは11時少し前に到着した。


 待ち合わせ場所には既に3人が居た。水崎弥生みずさきやよい里内葉子さとうちようこ、それに井端厚師いばたあつしだ。水崎さんはあのとき出会った格好ではない。すなわち、眼鏡じゃ無いしベレー帽もかぶっていなかった。服は白系統のワンピース。学校モードに近いが、しかし、可愛いことは間違いない。


「水崎さん、今日もかわ……いや、似合ってるね」


「ありがとう」


 水崎さんも照れているようだ。


 一方、里内さんは井端と何か話している。そこに太陽が行くが、里内さんは軽く返事するぐらいで井端の方とばかり話しているようだ。うーむ、これは本格的なのかも。


 そういえば、上山文佳かみやまふみかは? と思ったら俺たちより少し遅れてやってきた。


「おはよう、あんたたちと同じ電車だったみたいね」


「まあ本数少ないし、そうなるよな」


「太陽君もおはよう」


「おう、上山さん。おはよう。服、似合ってるな」


「すぐそういうセリフが出るのが太陽君って感じね」


「なんだよ、当たりきついな」


「いつものことでしょ」


 上山が太陽に近づき話す。いつもなら、嫉妬の目が厳しいところだが、今日は里内さんは井端の方ばかりだし、となると後は水崎さんしかいない。ふと、水崎さんを見たが、あれ? 太陽の方は見ていない。俺の方を見ていた。


「長月君、今日楽しみだね」


「え、ああ……そうだな」


 思わず生返事をしてしまう。水崎さんは太陽と絡みたいはずだが、なぜか俺の近くに居た。


「よし、じゃあ美味しいものをまず食べよう!」


 里内さんが言う。


「じゃあ、行くか」


 太陽の言葉で俺たちは移動を開始した。

 店の場所を知っている里内さんと井端が先に行く。その後ろに太陽と上山、水崎さんが並んでいる。俺は一番後ろから1人で付いていく、いつものパターンだ。


 ま、こうなるよな。いつもなら何も思わないが、水崎さんが太陽の横にいるのは何かつらい。


 と思ったら上山が何か言って水崎さんがこっちに来てくれた。俺が一人で居るのが気になったんだろうか。それとも上山に文句でも言われたか。


「長月君、あの店って行ったことあるの?」


「いや、初めてだ」


「そうなんだ。私は何回かあるかな。パンケーキがメインだけど……」


 水崎さんが俺にこれから行く店のことを教えてくれる。それは嬉しいが、その間に太陽は上山と2人でずっと話している。水崎さんはいいのだろうか。俺は心配になってきた。


「なあ、水崎さん。俺にかまわなくてもいいぞ」


「え?」


「こういうのは慣れてるからな。太陽のところに行ったらどうだ?」


 俺は不本意ながら水崎さんのことを考え、そう言ってみる。


「別にいいよ。私はここで」


「え?」


 水崎さんの思わぬ答えに俺は驚いてしまう。今までこういうことは無かったな。


「それとも私、邪魔かな……」


 水崎さんが俺を見て言う。


「いや、そんなことないよ」


「そう、じゃあ、ここに居るね」


 水崎さんはそう言って、俺の隣に居た。俺を一人にさせないためだろう。何と優しい子なんだ。


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