第20話 女子会(side 弥生)

 ゴールデンウィーク直前の金曜の放課後、私・水崎弥生と里内葉子、それに上山文佳の3人でカフェに来ていた。6人でのお出かけ前に葉子が3人で確認したいことがあるということで来たのだ。


「あれからいろいろ変化があったから、3人で意思統一しておきたいと思って」


「意思統一?」


 葉子の言葉に文佳が聞く。


「そう。変化があったしね」


 葉子がコーヒーを飲みながら言う。


「まあ、弥生は変化無しか」


「う、うん……」


 葉子の言葉に私は頷いた。


「でも、なんか長月と変な感じじゃなかった? まだ詳しく教えてもらってないんだけど」


 文佳が私に言った。


「あ、あれはね……実は日曜に偶然会ったんだ」


 私は少しだけ話すことにした。


「え、長月に?」


「うん。で、長月君が私の私服を気に入っちゃって……」


「へぇー」


「写真撮らせて欲しいって言うぐらい」


「え? あいつ、そんなこと言ったの? で、撮らせたの?」


「いや、断ったんだけど……」


「うん、それがいいよ。何に使われるか分かんないし」


「長月君が、かわいい、かわいいって何回も言うから照れちゃって」


「そんなことがあったんだ。長月らしくないわね。でも、めっちゃ脈あるじゃない」


「そ、そうなのかな……」


 文佳の言葉に照れてしまう。


「じゃ、そっちはいいや。問題は葉子ね」


 あっさり私に関心を無くした文佳が言う。


「うん。この間と言ってること変わっちゃうんだけど、実は……その……」


 なかなか言い出さない葉子に代わって文佳が言う。


「井端君が好きになったんでしょ」


「え、なんで!?」


「見てたらすぐ分かるわよ。バレバレよ」


「そ、そうかな……」


「うん。みんなわかってるわよ」


「え、みんな!?」


「うん。井端君本人も気がついてるんじゃないの?」


「そ、そんな。照れるなあ……」


「はあ……で、どうしたいの?」


 文佳は葉子に聞いた。


「い、いやあ……とにかく井端君と仲良くなりたいんで、サポートを……」


「わかったわよ。じゃ、明日は葉子は井端君、弥生は長月とペアで行動ね」


「じゃあ、太陽君は文佳とね」


 葉子が言う。


「ま、そうなるわね……何よ」


 私たち二人の視線を感じ、文佳は言った。


「いや、文佳は太陽君と仲良くなりたいんでしょ?」


 葉子が言う。


「べ、別にいいわよ。言ったでしょ、『推し』だって。太陽君と付き合おうとか思ってないし」


「でも、好きなんでしょ」


「好きだけど、そういうのはあきらめてるから」


「あきらめる必要ないんじゃない? だって私たちのグループだと文佳だけだよ」


「そうだけど、他にもいろいろ居るでしょ。生徒会長とかギャルとかバスケ部とか……」


「でも、文佳が一番有利じゃん」


「有利って……そんなことないから。太陽君は私なんて眼中に無いわよ」


「そんなことないと思うけどなあ……」


「あるって。私はいいから。まあでも、明日は二人のためにも太陽君と行動するわ。その間、私は推しとの時間を楽しませてもらうから。文句言わないでよ」


「言わないわよ」


「葉子が一番言いそうだから恐いのよ」


「私は井端君だから大丈夫」


「ほんとに大丈夫よね?」


「うん」


「わかった。じゃあ、明日だけは私が太陽君の隣はもらうわ」


 文佳は嬉しそうに言った。

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