第19話 月曜の雰囲気

 月曜日、俺はいつものように登校した。そして、いつもように水崎さんが登校してくる。


「おはよう、水崎さん」


「お、おはよう」


 俺がいつものように挨拶したが、水崎さんは逃げるように去って行った。うーむ、やっぱり昨日のが恥ずかしかったのかな。俺は昨日のことは誰にも言わないと水崎さんに約束していた。


 ふと見ると、水崎さんのところに山口さんが来て何か話している。山口さんが俺を見たので慌てて目をそらしてしまった。


 それにしても昨日の水崎さんは可愛かった。俺の理想そのものだったな。だが、水崎さんが好きなのは俺では無く太陽だ。いつもなら嫉妬などしないのだが、今回はへこむな。


「はぁ……」


 俺はため息をついた。


「なんだ、珍しいな。ため息なんて」


 太陽が俺を見て言う。


「まあな。人生、うまくいかないよ」


「ほう、悩みがあるなら協力してやるぞ」


「いいよ、自分で何とかする」


「そうか、いつでも聞いてやるからな」


「ありがとな」


 俺が思ってもどうしようも無い。いつものようにあきらめるしか無いか。


「そういえば、今度の日曜。朝11時熊本駅だそうだ」


 そうか、みんなで遊ぶんだったな。はぁ……ここでも現実を見せつけられそうだ。


「やっぱり、行くのやめようかな……」


「はあ? 今度こそ必ず来いよ」


「俺が来ないとダメか?」


「当たり前だろ」


「気が重いよ……」


 俺の様子がいつもと違うので太陽も戸惑っているようだった。


◇◇◇


 昼休み。いつものように6人で集まる。いつもと同じだが、昨日から少し違う雰囲気がある。里内さんがやたら井端に話しかけるのだ。


「それでね、井端君はどの教科が得意かなあって」


「俺は数学が苦手であとはどれも同じぐらいだな」


「そうなんだ。じゃあ、あの問題も……」


 他の4人はそれを黙って聞いていた。


 俺はときどき水崎さんを見てしまう。昨日とは違い、眼鏡もしていないし、ベレー帽もかぶっていない。だが、あれを見てしまうと普段の水崎さんもいっそう可愛く思えてきて、つい見てしまうのだ。


 水崎さんも俺の方を見て目が合ってしまう。そうすると2人とも恥ずかしくなり、顔をそらしてしまう。これを何回か繰り返していた。


「……なんか、いつもと違う2人がもう一組居るわね」


 上山が言った。


「え、誰?」


 井端が言う。


「長月と弥生、なにかあった?」


 上山が言った。


「え、何も無いよ。ね?」


 水崎さんが俺に言う。


「う、うん……何も無い」


 俺もそう言った。


「ふーん……まあいいわ。ここは追求しなくても」


 上山が言う。そんなに俺に興味無しかよ。


「後で聞かせてもらおうっと」


 上山はニヤっと笑って水崎さんを見た。


「な、何も無いから」


 水崎さんは赤くなって下を向いている。うーむ、そういう表情では何かあったのが丸わかりだが、別に恋愛沙汰では無いんだよなあ……。


「おい、長月。俺にも教えろよ」


 太陽もニヤついて俺に聞いてきた。


「何も無いって、ほんとに」


 俺は少しイラっとして言い返す。こんなに可愛い水崎さんが好きなのが太陽だなんて、ほんと納得いかない。

 だけど、いつもこうだった。仕方ないことでもある。


「はぁ……」


 俺はため息をついた。水崎さんが何か心配そうに俺を見つめた。ほんとに、水崎さんは優しい人だ。


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