第15話 マック(side 弥生)

 放課後、私・水崎弥生と里内葉子はマックに来ていた。

 葉子が寄り道したいというので、路面電車を途中の通町筋とうりちょうすじで降りて、アーケードでいろいろな店を見た後、何か食べようということで来たのだ。


「はぁ。いろいろお店を見て疲れたね」


「うん」


「でも、ストレス解消になった」


「ストレス……たまってるんだ」


「うん。なかなか上手くいかなくて。太陽君にいろんな女子来ちゃうし」


 葉子が言う。確かに最近は生徒会長やら、ギャルやらいろいろやってくる。


「でも、この間は一緒に遊べたでしょ」


「うん。でも、なんか太陽君の気持ちがこっちに向いてないって言うか。そういうの分かるから」


「そっか……」


「で、弥生はどうなの?」


「え?」


「長月君にアピールしてみた?」


「ああ、うん。少しね。でも、全然だし」


「そっか」


「遊びにも来てくれなかったしね」


「あれは残念だったね。でも、ゴールデンウィークがあるから」


「みんなで集まりたいね。でも、上手くいく気がしないよ」


「そっか……」


 少し暗い気持ちになった私たちはもう帰ることにした。そして、立ち上がり、ゴミを片付けていると葉子が言った。


「あれ? 弥生、ちょっと見て」


「ん、何?」


 私が振り向くと葉子の指さす方に井端君が居た。向かいに座っているのは長い黒髪の少女だ。


「あれって、天文部の江口さんかな」


「たぶん、そうだね」


 しばらく見ていると、なにやら口論しているように見える。そして、江口さんだけが立ち上がって去って行った。井端君は目に見えて落ち込んでいる。


「ちょっと行ってみよう」


 葉子が近づいていく。私も仕方なく近づいた。


「井端君、どうしたの?」


 葉子が声を掛ける。


「あれ? 里内さんに水崎さんまで。もしかして、見られてた?」


「うん。何を話してたかまでは知らないけど」


「そうか。まあ、要するに振られたってことで……」


「そうなんだ」


 私たちは井端君に向かい合って座った。


「うん。宇宙に興味が無い俺が何で天文部に入ったのかって聞かれたので、正直に江口さん目当てと言ったら幻滅したってさ」


「そりゃそうなるね」


「まあ、そうか。はぁ……早くも終わったー」


 井端君が天を見上げた。


「ま、次頑張りなよ」


「うん、そうするよ。さて、俺も帰るか」


「だね」


 私たちが帰ろうとしたときだった。


「あれ? 葉子と水崎さんか? それに井端も」


 見たことがある人が近づいてきた。

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