第13話 4人か3人か

 金曜の昼休み。里内葉子が言った。


「明日さあ、みんなで遊びに行かない?」


「俺はいいけど。みんなはどうだ?」


 霜村太陽が聞く。


「私はパス。わざわざ熊本市までくるの疲れるのよ」


 上山文佳が言った。俺たちと同じく、八代から通っているからな。


「俺もパス。明日はデートだ」


 井端が言う。


「ああ、江口さんだっけ? 付き合えたのか」


「いや、まだだ。だから大事な時期なんだ」


「なるほどな」


「お前は行くよな」


 太陽が俺に聞いてくる。


「うーん、暇だけど俺が行っても邪魔じゃないか?」


 女子たちは太陽を狙っているのに俺が行く意味は無いだろうに。


「そんなことないよ」


 水崎弥生が言う。ああ、水崎さんは優しいなあ。太陽狙いなのに俺のことまでいつも気を遣ってくれる。なんだか申し訳ない。そうだ、いいことを考えた。


「わかった、行くよ」


 俺はとりあえずそう言っておいた。


「そうか。じゃあ、明日は4人だな」


「うん。とりあえず熊本駅集合ね」


 太陽と里内さん、水崎さんは盛り上がっている。ま、俺は関係ないけどな。


◇◇◇


 翌日、4人で遊びに行く日。俺は考えていた作戦を実行に移した。太陽にメッセージを送る。


光輝『悪い。お腹壊したようだ。今日は家で休む』


太陽『大丈夫か?』


光輝『トイレに籠もっていれば大丈夫だ。お前達だけで楽しんできてくれ』


太陽『そうか、わかった。伝えておく』


 もちろん、腹など壊していない。仮病だ。女子達は太陽と遊びたいわけだけど、俺が居る手前、俺を誘わざるを得ないだろう。だから、こうして仮病で休む。ときどき使う手だ。


 さてと、土曜の休日を満喫するか。

 俺は、漫画を読み出した。


 俺と太陽はいろいろと似ている。背が高く、元バスケ部。スポーツ観戦も好き。正義感は強め。ただ、似ていないところが2つある。あいつはモテるが俺はモテない。そして、あいつはアウトドア派。俺はインドア派なところだ。


 俺はあまり人には言わないが漫画やアニメが好きだ。といっても、そんなに深く詳しいわけじゃないから、いわゆるオタクの友人は居ない。軽く楽しんでいるだけだ。


 今日読んでいるのは「放課後ていぼう日誌」。熊本の芦北あしきたを舞台とした女子高生が釣りをする漫画だ。アニメにもなっていて、それは見ていたが、漫画は途中までしか読んでいなかった。昼ご飯を食べた後もこれを読んでいたが、最後の巻まで読んでしまった。最新刊が最近出たらしいのだが手元には無い。仕方ない、久しぶりに買いに行くか。


 とりあえず自転車に乗り、本屋に来てみた。うーむ、探したけど無いな。

 仕方なく俺が本屋を出ようとしたときだった。


「あれ、長月?」


 そこに上山文佳が居た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る