第12話 増える女子達
入学してから三週間ほど経つ。俺たちは出来るだけ女子と関わらないようにしてきたが、それでも、太陽の周りには女子が増えてきた。
特に良く来るのが、金髪ギャルとバスケ部の子だ。金髪ギャルは先生に理不尽な注意をされているところを太陽が助けたらしい。俺が知らないうちにそういうことをされると俺もサポートしようが無い。ギャルはやたらカラオケに誘ってくるが、俺が断っている。
もう一人はバスケ部の山口さんだ。バスケ部だが背は高くない。山口さんは水崎さんの友達らしく、よく話しているところを見る。どうも、水崎さん経由で太陽が元バスケ部だとバレたようで、やたら入部を誘ってくるようになった。
「太陽君、バスケ部に見学に来たら?」
「だから、俺たちは遠距離通学だから部活動は無理だって」
「いいでしょ、見学くらい」
「入らないんだから行く意味ないだろ」
結局、これも俺が断っている。
そして、もう一人。厄介なやつが居る。そいつが今、教室に入ってきた。
「あれ? 生徒会長じゃない?」
誰かが言ったことで、俺も気がついた。そう、もう一人は生徒会長だ。名前は
以来、時々来ては太陽に仕事を頼むようになった。
「太陽君、ちょっと手伝ってもらえるとありがたいのだが」
「分かりました。俺で良ければ」
昼休み。落ち着いたところでやってきた生徒会長に連れられて太陽はどこかに行った。おそらく、生徒会室だろう。
「はぁ、太陽君、今日も行っちゃったよ」
里内さんが寂しそうに言った。
「そうだね」
水崎さんも寂しそうだ。
「何なのよ、あの生徒会長は。自分の仕事ぐらい一人でやりなさいよ」
上山は怒っていた。
やはり、この3人は太陽狙いだから太陽が居ないとすぐテンションが下がる。
「じゃ、席に戻ろうかな」
上山は自分の席に戻っていった。
里内さんも立ち上がる。
「あ、弥生はどうする?」
「私はもうちょっとここに居る」
「そう、私は戻ってるね」
里内さんは席に戻っていく。水崎さんだけ残るなんて珍しいな。ま、昼休みはもうちょっと時間あるし、暇なんだろう。
「ごめんな、太陽が居なくて俺たちだけで」
俺は水崎さんに言った。
「そんなことないよ。大丈夫」
水崎さんが言う。やっぱり、水崎さんは優しいな。
「せっかく残ってくれたし、太陽の面白い話でもしようか」
太陽の話なら興味を持ってくれるだろう。
「え、いいよ」
あら? 食いつき悪いか。
「それより、長月君の中学の頃の話とか教えてよ」
「え、俺の?」
「うん」
なるほど。本人が居ないところで太陽の話をするのは陰口っぽい。俺の話なら安心という訳か。
「だけど、俺は面白い話ないからなあ」
「長月の話か、俺も恋バナ聞きたいな」
井端が入ってきた。
「恋バナねえ。そうだなあ、俺もちょっと仲良くなった女子が居て、そいつに告白しようと思ったことならあったかな」
「え、そうなんだ。で、どうなったの?」
水崎が言う。
「そいつも例に漏れず、太陽が好きだったんだよ。だから俺に近づいてきただけだった。それがバレて終わりだ」
「そっか。そんなことがあったんだね」
「ひでえやつだな、そいつ」
井端が言う。
「まあ、そうかもな」
あまり思い出したくない出来事だ。
「でもきっと、高校では長月君もいい出会いがあると思うよ」
水崎さんがフォローしてくれた。
「ありがとう、水崎さん」
「う、うん」
水崎さんは好きな人の友達に過ぎない俺にもちゃんとフォローしてくれて、ほんとに優しい人だなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます