第10話 元カレ元カノ

 翌日の昼休み。俺たちはいつも通り、6人で集まる。


「昨日は5人で帰ったようだな」


 井端が俺たちに言う。


「まあな。お前は忙しかったのか?」


「俺は天文部に行ってたから」


「天文部? お前が?」


 あまり井端のイメージに合わなかったから言った。


「ああ」


「お前、宇宙とか星とか好きだったのか?」


「いや、そういうわけじゃないけど」


「じゃあ、なんでだよ」


「俺が狙ってる子が入ったからだよ」


 やっぱりそうか。


「誰なんだ?」


 太陽が聞いた。


「隣のクラスの江口美菜えぐちみなさん。長い黒髪が似合う清楚な感じの子だ」


「へぇー」


 俺はあまり関心を持てずに言った。


「長い黒髪ね。葉子もそうじゃない?」


 上山が言う。


「全然似てないね」


 井端が言った。


「私と似てる人を好きになったとかやめてよね」


 里内さんが言う。


「似てないから安心しろ。もっと、清楚な感じだから」


「へぇー、似てなくて安心した」


 井端と里内さんの言い合いを見て、上山が言う。


「ねぇ、あんたたちって何かあったの? 同じ中学なんでしょ?」


 そうか。里内さんの元カレの話は上山にはしてなかったな。


「なんか、井端の親友が里内の元カレなんだってさ」


 上山だけそれを知らないのは不公平だと思い、説明する。


「違う違う、親友じゃ無い。ただの友達」


 井端が言う。


「そうなのか?」


「まあな。今じゃ連絡も取ってないし、どうしてるかも知らないよ」


「ふーん、そうなんだ」


 里内さんが言った。


「井端君の元カノがどうしてるかは知ってるけどね」


 里内さんが言う。


「おい、やめろよ」


 井端が慌てた。


「ん? どうした。もしかしてこのクラスに居たりするのか?」


「このクラスじゃ無いけどね」


 里内さんの言葉で分かった。


「じゃあ、他のクラスか」


「そうだよ。あんまり詳しくは言いたくない」


 井端が言った。


「なるほどな。じゃあ大変だ」


「俺がこの学校に来た理由は彼女と一緒の学校に行きたかったからだし。今じゃ、つらいだけだがな」


「だから、早く彼女を作りたいのか」


「そうだよ」


 なるほどなあ。


「2人は彼女とか元カノとか居ないの?」


 水崎さんが俺と太陽に聞いてきた。ま、太陽に聞きたいんだろうけど俺もついでに聞いておこうということか。


「2人とも居ないぞ」


 太陽が答える。


「そうなんだ」


「確かに太陽君はすごくモテモテだったけど、彼女を作ったという話は聞かなかったわね」


 上山も証言する。


「え、上山さん、立候補しなかったの?」


 井端が聞く。


「するわけないでしょ。私なんて相手にされないわよ」


「そんなこと無いと思うけど。なあ、霜村」


 井端が太陽に聞いた。


「ああ、そんなことないぞ」


 太陽が言う。お前、そんなこといったら付き合ってもいいって事になるぞ。


「あら、そう。お世辞でも嬉しいわ」


 上山があっさりかわした。


「まあ、上山は美人だしな」


 俺が言う。


「なにそれ。口説いてるの?」


「はあ? 客観的な事実だろ」


「やっぱり口説いてる。ほんと、私のこと好きなんだから」


「何言ってるんだよ、まったく……」


 俺はあきれた。


「はいはい、ありがとう」


 上山が俺をからかうのは最近は毎日だ。

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