第7話 女子2人(side 弥生)

 その日の帰り、私・水崎弥生は里内葉子に連れられて、百貨店の2階にあるカフェに来ていた。少し2人で話がしたいと言われて、寄り道したのだ。


「わあ、ここ初めて来た。葉子はいつも来てるの?」


「いつもは来てないけど、親に連れられてきたことあったから」


「そうなんだ」


「少し高めだから他の高校生は居ないし。いいでしょ」


「そうだね……で、話って何?」


「今日のお昼の話の続き。ねえ、正直に言って。弥生も太陽君好きなの?」


「え!?」


 私は葉子の言葉に驚いた。


「私は好き。でも、弥生は親友だし、険悪にはなりたくないんだ。だから、はっきりさせて堂々と戦いたい」


「そ、そうなんだ……」


 葉子がはっきり太陽君のことが好きというとは思わなかった。でも、確かにそういう感じはしていた。


「で、どうなの? 太陽君のこと、好きなの?」


「私は……どちらというとだけど……長月君かな」


「え!? ねえ、私に気を遣ってるなら――」


「そうじゃないよ。本当にそうだから」


 私は正直に言った。


「嘘でしょ。長月君のどこがいいの?」


「だって、私たちを助けてくれたから」


「それは太陽君でしょ?」


「違うよ。最初は太陽君が来てくれたけど、いつも長月君が来て最後は何とかしてくれたから」


「それは……そうだけど」


「ナンパされてたとき、太陽君一人で大丈夫かなって思ったら、長月君が後から現れたでしょ。あ、かっこいいって思っちゃって」


「そ、そうなんだ」


「うん……」


 自分でも顔が赤くなっているのが分かった。


「どうやらほんとみたいね。はー、よかったあ。弥生と争うことになったらどうしようってドキドキしてたんだ」


「ふふ、私は葉子を応援するよ」


「じゃあ、私は弥生を応援するね」


「え、私はまだはっきり好きってわけじゃ……」


「なに? まだ恋するってところじゃないの?」


「うん。まだ、よくわかんないかな」


 私はこれまで恋をした経験が無いし、好きになるという気持ちがよく分かっていなかった。


「そうなんだ。でも、昼休み毎日一緒にいるから、どんどん好きになるんじゃない?」


「そうかも……しれないけど」


「ふふ、応援してる。はあ……でも、あとは文佳か」


「そうだね……」


 上山文佳は太陽君への好意を隠していなかった。


「中学から太陽君と同じだし、かわいいし、強敵かも」


「うん。でも、私も心配してるんだ」


「え、何を?」


「だって、長月君が文佳を誘ったでしょ?」


 文佳が私たちと一緒に食べるようになったのは長月君が気にしていたからだ。

 そして、「どうしても上山さんと一緒に食べたい」と本人に言っている。


「あー、そうか。長月君の方か」


「うん。長月君、文佳のことを……」


「確かに心配だね。でも、大丈夫だよ。弥生、可愛いし」


「もう、人ごとだと思って……」


「ほんとほんと。弥生が本気出せば誰だってすぐ落ちるって」


「落ちるとか……」


「ふふ、お互い頑張ろう!」


「う、うん」

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