第6話 3対1+2
その日の昼休みも俺たちは6人で集まって昼食を食べていた。つまり、俺と霜村太陽、それに井端厚師の男子3人、それに水崎弥生、里内葉子、そして中学からの同級生の上山文佳がそこに加わっていた。
「それにしても、上山さんが一緒に食べてくれるとは思わなかったな」
俺はぽつりと言ってしまった。
「何よ。あんたがどうしても一緒に食べたいって言うからでしょ」
「まあそうなんだけどさ。中学の頃、男嫌いって噂あったから」
「ああ、あったな」
太陽も聞いたことがあったらしい。
「何それ。別に男嫌いなんかじゃないわよ」
「あ、そうなんだ。ただの噂か」
「そうよ。私に振られた誰かが言いふらしたんじゃないの」
「なるほどな。上山さん、中学の頃すごくモテてたし」
「そ、そんなことないし……」
「あー、やっぱりそうだよね。文佳、かわいいもん」
水崎さんが言う。
「何それ、嫌み? 弥生のほうがかわいいでしょ」
「そ、そんなこと――」
「それに、中学の頃モテてたっていうなら太陽君の方がすごかったわよ」
「あー、そりゃそうだな」
俺も上山の言葉に同意した。
「そんなことないよ」
太陽が謙遜する。
「そんなことあるでしょ。女子はみんな太陽君、太陽君って言ってたわよ」
まあ、みんなというのは大げさだとしても、そんな雰囲気だったことは確かだな。
「へー、じゃあ、もしこの男子3人の誰かと付き合うとしたら、上山さんは霜村を選ぶのかい?」
井端が上山に聞く。
「そりゃそうでしょ」
上山はあっさり認めた。
「あ、そうなんだ」
「ぶっちゃけ、ここの女子3人、全員そうだと思うわよ。ね、弥生、葉子」
「え!? 私は……」
「まあ、そうかもね」
2人の反応を見て井端が凹む。
「ありゃりゃ、3対3と思ってたら、3対1と付き添い2人かよ」
「あんたは誰も狙わないって言ってるからいいでしょ」
「そうだけど、ちょっとはモテたかったなあ。だろ? 長月」
「俺はいつものことだから慣れてるよ」
「達観してるなあ」
「まあな」
最初から分かっていることだし、俺はほんとに何とも思っていない。それに井端だって他のクラスの子を狙っているようだから本当は問題ないはずだ。社交辞令みたいなものだろう。
そういうわけで、太陽が誰を選ぶのかは分からないが、とりあえず、このグループの関係は3対1とその他2人という構図になった。ま、俺にはこの3人は美人過ぎてちょっとハードルが高いしな。
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