第4話 井端と2人

 結局、里内葉子と水崎弥生の女子2人が霜村太陽を褒め、俺が忘れないでくれ、と突っ込む。中学の頃と同じようなパターンがここでも繰り返された。まあ、いつものことだな。


「そういえば、井端はこの2人とは初対面か?」


 俺は黙っている井端に話を振ってみた。


「いや、よく知ってるぞ。同じ中学だしな」


「うん、そうだね」


 水崎さんが返す。そうだったのか。


「この2人は中学でも人気者だった。俺はもう見慣れたから高校では別にいいやって思ってたんだけどな」


「ひどーい」


 水崎さんが言う。


「ま、特に里内はな」


「そうね」


 井端の言葉に里内さんは冷たく返した。この2人何かありそうだな。


「何だ? 2人付き合ってたとか?」


 俺はわざと軽く言ってみる。


「違うよ。俺は付き合ってない」


「『俺は』って?」


「別に言っていいわよ。井端君の友達と付き合ってたってこと」


 里内さんが言った。


「そうだったんだ」


「だから井端君とも一緒に遊んだことあるし」


「ダブルデートってね」


 井端が言う。


「でも、お互いもう別れたわね」


「まあな。卒業とほぼ同時。あっという間だったな」


「それは……寂しいな」


 俺は今まで付き合った人なんて居ないから分からないが、悲しいことだというのは分かる。


「いいんだよ。俺はすぐに恋人を作る予定だからな」


 井端が言った。


「へぇー」


「言っとくけど、お前達2人は狙わない。だから安心してここに食べに来い」


 井端は水崎さんと里内さんに言った。


「何よ。私だって、あなたと付き合いたいなんて思ってないから」


 里内さんが言った。


「まあまあ。仲良くしようぜ」


 太陽が言う。


「せっかく、何かの縁でこの五人が集まったんだから。明日からも一緒に食べよう。どうだ?」


 太陽がそう言い出した。はあ……この二人には関わるなと言ったのに。こいつはこの二人を守ることで頭がいっぱいなのだろう。


「太陽、井端はともかく、水崎さんと里内さんに迷惑だろ」


「なんで、俺はともかくなんだよ。まあ、俺は明日からもここで食べるつもりだけどな」


 井端が言った。


 里内さんと水崎さんは小声で話し合ったあと、里内さんが言った。


「私たちも良ければお邪魔させてもらうわ」


「そうか、じゃあよろしくな」


 結局こうなってしまうのか。だが、もう二人を追い返すわけにはいかないか。お昼だけの関係にしておけばいいだろう。


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