第2話 人助け
駅ビルのそばで男達3人に絡まれているクラスメイトを見かけ、霜村太陽はすぐに助けに行ってしまった。
「しょうがねえなあ、まったく……」
俺は太陽の横に並ぶ。
「光輝、来たか」
「仕方ねえだろ。久々にやるか」
俺と太陽はファイティングポーズを取った。
「なんだよ。お前ら。けっ、しらけたから行こうぜ」
3対2になったら優位が無くなったと判断したか、あっさりと三人組は引き下がっていった。
「なんだ、もう終わりか」
俺が言う。
「終わりでいいだろ……お前たち、大丈夫か」
太陽は女子2人に声を掛けた。
「う、うん。大丈夫……確か同じクラスだよね」
長身の女子が言う。
「覚えていたのか。俺は
「私は
「ありがとう、太陽君。水崎弥生です」
3人は自己紹介をしあった。長い黒髪が里内さん、目がくりくりとしたアイドル系が水崎さんか。
何か俺の存在が忘れられているような気がするが、太陽が助けたようなものだから、別にいい。俺は少し離れて三人を見守っていた。
すると、水崎さんが俺の方を見た。
「あなたも同じクラスよね」
「なんだ。俺の存在見えてたのか」
「み、見えてるから」
「そうか。俺は長月光輝。こいつと同じ中学で親友だ」
「そう。私たちも同じ中学で親友よ」
「そうか。怪我は無かったか?」
「うん、大丈夫」
とりあえず、里内さんと水崎さんが無事なようでほっとした。
「それじゃあ、行くか」
俺が太陽に言う。
「え、2人が落ち着くまでそばに居た方が……」
「お前、なんでこの学校に来たのか忘れたのか?」
こんな風に人助けをして、女子に惚れられ、そこからトラブルが起こったのだ。
「そ、そうだな。悪い。俺たちは行くから」
太陽が女子2人に言う。
「うん、もう大丈夫」
「じゃあ、明日な」
「うん。太陽君、また明日!」
「太陽君、またね」
やっぱり、俺のことは見えていないようだな。別に寂しくは無い。さっさと駅に歩く。
「えっと、長月君もまた明日!」
水崎さんがついでのように言ってくれた。ついででも、やっぱり嬉しい。
「おう!」
俺は片手を挙げ、駅に向かった。
ん? 太陽は名前で呼ばれてたのに、俺は長月君か。まあ、そんなもんだ。
◇◇◇
中学の時にモテまくりでトラブルに遭っていたのは俺の親友の霜村太陽。それに対し俺はトラブルに巻き込まれてはいたが、モテることは無かった。
太陽は何人にも告白されながら全て断り、結局、彼女は居なかった。その理由は俺も知らない。そして、俺も彼女は居ない。誰からも告白されていないし、俺も告白しなかった。
でも、好きになった女子は居た。そいつも俺のことが好きだと思っていたのだが、盛大な勘違いだった。そいつも結局、太陽が好きだから俺に近づいただけだったのだ。
翌日の朝、俺は中学時代のことを思い出し、太陽に警告した。
「お前、あの2人に関わっていくなよ」
昨日助けた水崎弥生と里内葉子はクラスの人気者だ。そんな2人と関わりを持ったら、また中学の時と同じようなトラブルが起こる。
「分かってる。俺から積極的に行くことなんて無い」
「昨日は行ってただろ」
「あれは困ってたから仕方ないだろ。あれで助けないなんておかしい」
「はぁ……」
こいつは正義感が強い。だからこそ、トラブルに巻き込まれやすいのだ。そして、尻ぬぐいが俺にまわってくる。俺はこいつが心配だ。中学時代も俺が動かなかったら大変なことになっていたことが何回もあった。
教室に入る。やはり水崎さんと里内さんの2人は人気者のようだ。周りに人が群がっている。俺たちはそれに関わらないように自分の席に座った。そこに水崎さんと里内さんがやってきた。
「あの、太陽君。昨日はありがとうね」
「私からもありがとう」
2人が太陽にお礼を言ってきた。俺のことはやはり見えていないようだな。
「いや、もう大丈夫だから。2人は席に戻ってくれ」
太陽が何かを言い出す前に俺は言った。
「あ、長月君もありがとう」
ついでのように水崎が言った
「いいから。さあさあ」
俺は2人を無理矢理押し返した。
「おい、光輝……」
「いいんだよ、これで」
俺は席に戻り、一息ついた。
そこで、何か視線を感じ、振り返る。そこには
俺は上山の視線を無視して前を向いた。
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